表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/51

6…自分を披露する。

「この国で剣術の1番手もしくは2番手の方と、お手合わせさせていただきたいのですが……」


 ミアが真剣に理由を説明すると、ルカが騎士団の練習場へ行くことを提案してくれた。

 早速移動したので、ルカが歩きながらミアと訪ねた目的の話をし始めた。


「マルコ兄上が、婚約者をミアに変えると駄々をこね始めて。ミアは婚約者はいるの?」


「いえ、それが全く。話に上がったことがないです」


「そっか……」


 ルカとジュゼは何となく察した。

 きっと引く手あまたのミアを家族で守っているんだろう、特に父親と弟が。

 さっきの手紙のお陰で、会ったこともないスフィル辺境伯家の想像が付いてしまった。 



「兄上のほぼ決まりかけてた婚約者候補が、国としてはなかなかの好条件で。できれば決まって欲しいんだよね」


 ため息をつきながら、ルカは困った顔をした。


「決定できないんですか?」


「一応、本人の同意がいるんだ。だから、はっきり言うと、ミアと婚約することを諦めさせて欲しいんだけど……」


 ミアは少し考えて、何かを思い出したようだ。


「なるほど。でしたら、記録装置等で今からの手合わせを撮って、見ていただくのはどうでしょう? そこで、私は自分よりも弱い人とは結婚しないと言えば良いかと」


 そして、ミアは苦笑いしながら付け足した。


「外で求婚されたら、こう言いなさいと教えられていました。今まで機会がなかったので忘れてましたけど」


「そっか……」


 スフィル辺境伯家についても突っ込みたいところだが。

 そこまで言うことができるなんて、相当な実力なんだろうと、ルカとジュゼはそちらの方が気になってしまった。






「では、よろしくお願い致します」


 ルカが事情を説明すると、1番手の騎士は不在のため2番手の騎士がミアと手合わせすることになった。



 アルカル国の練習用の切れない剣を渡されたミアは、目を丸くして「これも質が良いわ」と呟いた。

 第一皇子のマルコに突き付けられた剣も、質の良いアムル山のミスリルだったし。


 女性用の乗馬服を借りて着ているミアは、動きながら剣を振り回し、服や剣の癖を確かめ始めた。

 奇麗なご令嬢が剣を振り回しているミスマッチ感がすごい。

 しかし、その様が、仕草が、どれをとっても洗練されていて、その場に居る者たちは皆見入っていた。



 ミアと騎士が剣を交わし始めてからは、見入るというよりは、全員が度肝を抜かれてただ見ている状況だ。


 騎士は力も強いし押し負けることはないが、ミアは太刀筋が美しく、つい目で追ってしまう。

 そして隙がない。

 力では騎士の方が勝ちだが、それを上手くいなして即反撃をする。ミアの方が戦い慣れしているように見えるのだ。


 しばらくの間、剣戟が響いた。




「……ダメだ。参りました。勝てる気がしません」


 騎士が剣を下ろし、お辞儀をした。

 ミアも剣を止めて、同じ様に挨拶をした。

 周りからは拍手があがっている。


 強いことを証明できて満足そうなミアは、記録装置を持っているルカの方を向いて、笑顔になった。

 ルカは急いで記録を止めた。


「何なんだ今のはっ。逆効果だろう?!」


 ジュゼは隣でくすくす笑って、ミアを見ている。




「ご挨拶がおくれました、ミア・マウル・スフィルと申します。弟の実力は私と同じ若しくはそれ以上。父は私との手合わせの時に、16才の私をまだ子ども扱いしてきます」



 ミアの発言で、その場が静まり返っている。



「お分かりいただけましたか? 敵にしてはならない相手だと。もし、スフィル辺境伯家から挑発されることがあっても、絶対に受けないで下さい。私が何とかしますから……ご迷惑をおかけします」



 スカートではないし髪も乱れているけれど、ミアはスカートがある体でカーテシーをして、騎士団を絶句させてしまった。



 ルカがあきれたように見て呟いた。



「ミアは自分の価値をきちんと知って出し惜しみするべきだね」



 ジュゼが奇麗な顔で微笑した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ