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5…動揺し、

「素敵!!」


 窓から外を見ると、城下が広がっている。

 謁見の間のような幾何学的な建造物が並んでいて、夜の街並みは特に幻想的で、ミアはため息をついて窓に張り付いた。



 マルコが双子を連れて行った後、滞在中にミアが使用して良い来客用の部屋が用意できたと言われ、ミアは案内されたのだ。

 侍女も居たが、用がある時だけ呼ぶことにさせてもらった。



「まさか、こんなことになるなんて……」


 窓から遠くへ視線を移し、スフィル辺境伯家を思い出す。

 第二皇子のルカが、ミアの無事を知らせる手紙を出す手配をしてくれたらしいので、とりあえずは大丈夫だろうと思うことにした。


 スフィル辺境伯領から出たのは、数ヶ月前に首都に滞在したのが初めてだった箱入りのミア。

 領地どころか国まで飛び越えて、アルカル国までやって来てしまった。



 湯浴みを済ませると、ミアにどっと疲れが出てきた。今日は父親との剣術の稽古もあった日だったと頭に浮かんできた。

 風魔法で髪を乾かすと、アーティとチョークを見つけた日のことも思い出す。


 全てが何年も前の遠い日のことみたい……



 寝台に入ると、すぐ目が閉じていく。

 とにかく、父とカイが暴走していませんようにと、ミアは祈りながら眠った。





 翌朝ミアが目覚めると、とっても良い天気で気持ち良さそうな空が見えた。

 近くで小鳥がさえずる声も聞こえて、バルコニーに出てみたくなったミアはゆっくり体を起こす。


 すると、寝衣が何かに引っ掛かった。



「……どうして、居るの」



 ミアの寝衣の中に子猫が2匹眠っている。



「皇太子殿下、おはようございます」


 そっと寝衣から子猫を出して、挨拶をする。いつもとは違って、丁寧に。


 子猫たちは手からしっぽの先まで伸びをしてから、ミアに抗議するように鳴き始めた。



 ミアの準備が整うと、ミアは双子の子猫を抱きかかえて、昨日教えてもらった食堂まで行くことにした。

 途中、すれ違う人という人に振り返られ、その都度双子たちがシャーシャー怒るのをミアがなだめながら歩いた。


「ふふ、皆、スフィル辺境伯家の恐いご令嬢が気になるのかしら」


 ミアの言葉を聞いて、子猫たちはため息をつき、おとなしくミアの肩に顎を乗せて抱かれた。






 食堂で出会ったマルコに子猫たちは首をつかまれて連れて行かれてしまった。

 ミアは1人で部屋に戻り、何気なく窓から空を見上げると、大きな鳥が何かを探すかのように飛んでいる。


「……あれ? あれは、タツのタカに、似てるけど。そうかしら。ビター!?」


 ミアは部屋のバルコニーに出て、見覚えのあるタカを指笛で呼んだ。



ピィィィィ



 それに気付いたタカは急降下して向かって来た。

 ミアの近くになるとスピードをふわりと緩め、バルコニーの手すりに止まった。


「やっぱりビターね!! 来てくれたのね。良い子ね。ありがとう」


 ミアがビターの頭にキスをしてなでていると、誇らしそうにしているビターの足に手紙のような物が巻かれている事に気付いた。


 ミアがそれを解いて読んでみると、ブチ切れているであろうカイの字が目に飛び込んできた。



「……まずいわ」


 ミアは真っ青になって、立ち尽くしている。



コンコン


「! は、はい」


 ミアは警戒しながら、扉をゆっくり開けた。


「こんにちは。今、良いかな?」


 護衛と従者を連れたルカとジュゼが扉の前に立っている。


 ミアは良かったのか悪かったのか判断しきれないまま「どうぞ」と扉をしっかり開けた。



「兄上のことについてなんだけど」


 従者たちがお茶の用意をしている間、3人はソファに座って話を始めた。


「あの、申し訳ありません。その前に早急にお話しなければならない事があります」



 ミアは非常に申し訳なさそうに、2人の方を向いた。


「これをタカ便で、今受け取りまして」


「タカ?! え、鳥の?」


 ルカは信じられないという顔をした。タカは人に懐かせるのは至難の業と言われているからだ。

 ミアがバルコニーのビターが止まっている手すりを指差すと、もっと信じられないという顔になった。


「本物だね」


 ジュゼが珍しく目を輝かせているのを見て、ルカは近付かないように釘を刺した。

 手紙はエスカー国の言葉で書いてあったので、ミアがオブラートに包んでアルカル国の言葉に訳して伝えた。




"姉上、無事か? 猫で可愛いからって勝手に連れて行きやがって。姉上にちょっとでも触れたら斬ってやる。もし姉上に何かあったら、スフィル辺境伯家から宣戦布告すると父上が言ってる。カイ"




 最後通告のような内容の手紙だった。



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