閑話休題14〜ミアのため
SSをこれから計6話投稿する予定です。
読んでみてください。
疲れ切った顔をしたルカが、ジュゼに愚痴っている。
皇太子就任式がやっと終わって、ホッとした途端に何やらルカを悩ませることがあるとか。
「双子なんだけど、全然勉強に身が入ってないんだよ。チョークは、まぁましだけど。アーティが本当にダメだ」
双子の末っ子は、生まれてまだ2年も経っていない。甘やかされて育ち、先日には欲しかったミアまで手に入ったのだ。
特にアーティがわがまま全開になっているらしい。
ジュゼが少しだけ考えて、相変わらずの奇麗な顔でにっこり笑って提案した。
「それなら、僕たちの肖像画の部屋に皆で行こうか。ミアとカイがまだ滞在しているうちに」
ジュゼの奇麗な笑顔に、ルカは背筋がゾワッとしたけれど。
ルカは、アーティとチョークとは魔力では力差があまり無いけれど、力では双子の方が上なので、力尽くでいくこととできず振り回されっぱなしの毎日なのだ。
疲れ切っているのもあって、ルカはもうジュゼにお任せすることにした。
どうか小憎たらしい弟たちにガツンとやってくれ。
これが今のルカの本心だ。
◇
「か、可愛い!!」
ミアがカイの腕にしがみついて、叫び声に近い声を上げている。
「ジュゼもルカもマルコも、こんなに可愛かったのか!」
いつの間にかマルコやルカまで呼び捨てにしているカイを注意するのも忘れて、ミアはカイを抱きしめながら肖像画に夢中になっている。
「抱っこしたかったわね」
「絶対、最高の手触りだろ。あ! 姉上、あっちに人の姿もあるぞ」
「猫も人も、どれも可愛いわ!」
大好きなミアとカイが自分のことを大絶賛しているのを聞いて、先ほどからジュゼはご満悦だ。
ここは、皇子たちの肖像画が集めて置いてある部屋で、雰囲気はギャラリーだ。
ミアとカイは時々叫び声のようなものを上げながら、大興奮で肖像画を見ていく。
ミアとカイが見終わってお礼を言ってきたので、先にお茶が用意されている部屋へ従者に案内させた。
ジュゼはそっと扉を閉め、部屋には兄弟4人だけになった。
腹を立てたアーティが闇魔法でジュゼの子猫の肖像画を焼こうとした時……
パンッ
闇魔法をきれいに打ち消す聖魔法が放たれた。
全く同じ質と量、タイミング良く当てなければ、こんなにきれいに打ち消すことはできないし、かなり難易度の高いやり方だ。
アーティが振り返ると、ジュゼが無表情で手を前に出している。
「嫉妬でこんなことしようとするなんて、醜いよね。あ、僕に魔法で勝てると思わないでね。持っている量も質も違う上に、してきた努力だって違うから」
ジュゼはサッと指を振って、アーティとチョークに同時に手錠のような物を付けた。
1人に対してするだけでも難易度高めの魔法を、さらっと2人同時にするので、やはりジュゼはすごいのだ。
アーティは勿論、チョークも何も言えず、2人で悔しそうな膨れっ面をしてジュゼを見ている。
「魔法だって勉強だって僕に敵わないくせに。何でミアに選ばれたんだろうね。僕が先に拾われてたら、ミアは僕を選んでたんじゃない?」
ジュゼがずっと悔しくて、まだ消化しきれない事をアーティとチョークに投げ掛けた。
「君たちがそんな状態で。完璧にこなそうと努力をするミアの隣りに立って、情けないと思わない? ああ、ミアはやっぱり君たちのことは子どもとして可愛いのかな」
ジュゼは本音もあったので、少しムキになって双子にまくし立てる。
大人気ないかもしれないけど。これくらいは言わせてよね。
「ねえ、僕と君たち、どっちがミアと釣合うかな」
ぐうの音も出ないアーティとチョークは、もう黙りこくっていた。
ルカはジュゼの変わりように感心しつつも恐怖を感じながら、そのやり取りをただ見ているだけだった。
とばっちりを避けたい一心で、静かに、静かに。
「ミアに関わっていない案件はスルーするけどね」
後のジュゼの発言を聞いて、ルカは先が思いやられたけれど。
いや、本当に困ったら、ミアに関わってもらえば良いのかもしれない……
「もしミアをわざと関わらせたら、僕は全力でミアをさらって消えるよ」
あー、やりかねない。そんなことになったら、この国にはカオスな未来しか待っていない。
「そんなことしないよ」
ルカは泣く泣くそう言うしかなかった。
その日からアーティもチョークも全ての勉強を全力でやり始めたとか。
ミアも嬉しそうだ。
負けられない相手として認識しているジュゼと比べられても恥ずかしくないようにと、アーティもチョークも必死になって何事も真剣に取り組んだ。
ハイスペ皇太子が出来上がるまで、あと少し。
それでも、やっぱりジュゼには敵わないけれど。
ジュゼだって双子に負けたくないから努力し続けているのだ。
全てミアのために。




