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閑話休題13〜お忍びデート(チョーク)

 今日は市場が催される、市井が月に最も賑わう日。

 アーティは公務で城外へいかなければならないため、明日スフィルに帰るミアはチョークとお忍びで出掛けることになった。


「何なんだよ、最後の最後まで本当諦めの悪い……」


 乱れた髪を直しながら独り言を言って現れたチョークは、部屋で準備をしているミアを見てすぐにご機嫌になった。


 アーティと一悶着あったのだろうかと、ミアでも分かってしまったけれど。


「ミア、今日の格好も特別可愛いね」


 商家の娘のようにしてもらったミア。

 困った顔で嬉しそうに笑っている。


 実はチョークは幼い頃からこのミアの笑顔がたまらなく好きなのだ。


 どう頑張ってもミアは貴族にしか見えないので、侍女たちが相当苦戦しているという噂がチョークの耳にも入ってきていたのだ。

 だから、アーティを置いて早くミアを見たくて予定より早めに来てしまった。

 もしかしたら、自分の大好きなミアの笑顔を見れるかもしれないと。


「ありがとう。皆が頑張ってくれたの」


 何とか間に合ったという顔をして、侍女たちがチョークにお辞儀して部屋から出た。


 チョークがキョロキョロと何かを探しているのに気付いて、ミアは気まずそうにチョークの服の裾をつまんだ。


「今日カイは騎士団に行ったの。最終日だからって。チョーク、カイとも一緒に行きたかったわよね」


 まさかの2人きりでのお出掛けに、チョークは「そうなんだ、残念! じゃあ行こうか!」と嬉しさを隠せず返事をして、ミアと手を繋いで馬車へ向かった。


 またミアはチョークの好きな笑顔になった。



 馬車の中で、チョークは何かを思い出して、ミアを見た。


「ミア、僕はジュゼやアーティと同じ事はしないから。だってミアの首とか、僕が1番最初だったし」


「え?!」


 たぶんきっと絶対あの事だわと、ミアは目が大きくなった。

 それに、全く納得のしていない顔でチョークが言うものだから、ミアも気まずくてどう答えて良いか迷ってしまっている。


「でも、僕だけ何もないのは、嫌なんだけど」


「あれは不可抗力というか、不意打ちというか、そういうのだったのよ」


 必死にミアは弁解するけれど、チョークは納得なんてしてくれそうにない。


「だからお願いがあるんだ」




 馬車から降りて、上機嫌のチョーク。

 チョークと手を繋いでいるミアは、反対の手で真っ赤な顔を隠しながら歩いている。



 何をお願いしたのかは、2人だけの秘密。


 アーティにだって言ってやらない。



「帰りも、お願いして良い?」


 ちょっと意地悪そうにチョークがミアを見た。


 ミアは恥ずかしそうに涙目でチョークをパシパシ叩いて反抗したけれど、そんなミアが可愛くて、チョークはもっとご機嫌になっていく。


 ああ、好きなミアの顔が増えていく。可愛いな。


「ミア、あっちから見て回ろう。あの露店の食べ物が美味しいんだ」


 ミアと離れていた5ヶ月の間に、チョークは1人でこっそり王城を抜け出して市井をフラフラ歩いていたのだ。

 寂しくて、悔しくて、会いたくて。

 何かをしていないと気が狂いそうだったから。


 そのうちに、かなり詳しくなってしまった。

 顔馴染みもできてしまった。

 うちの娘はどうかと、あの娘はどうかと言われてきたけれど、今は遠くにいる婚約者を必ずいつか連れて来ると言って断っていた。

 いつかミアと来たい、ミアに見せたい、そんな風に想いを馳せながら、5ヶ月を耐えてきたのだ。



 やっと、やっとだ。ミアと来れた!



 笑顔のチョークは、ミアと手を繋いで慣れた風に市井を迷いなく歩いて行く。



「チョーク、詳しいのね」


 チョークの好物の1つ、串に刺さったカラフルな綿菓子を食べながら、ミアは感心している。

 そんなミアの姿を見て、チョークはご満悦だ。


 ミアに会えない辛さを紛らわすために詳しくなったなんて、恥ずかしくて言えないから、チョークは笑顔で答えた。


 ミアは顔を赤くして、つられて笑顔になる。



 ああ、可愛いなぁ。

 結婚したら、もっと可愛いミアが見れるんだろうな。

 でも結婚するためには、色々越えなきゃならない関門があるんだよね。

 ミアがスフィルに帰ったら、すぐ僕たちも行かないと。


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