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4…噂のご令嬢は、

「はじめまして。私は第二皇子のルカ・カルド・アルカル」


「あ、ご丁寧に」


 やっぱり王族だっのかとミアは諦めの表情になりながら、ルカの自己紹介を聞いている。



「あそこの口が悪くて君に剣を向けた不届き者が、第一皇子のマルコ・カルド・アルカル。あとで好きにのしてやって」


 ひどい顔をしながらマルコはルカを見ている。

 ミアはペコリとお辞儀した。


「で、そこの静かなのが第三皇子のジュゼ・カルド・アルカル」


 皇子たちは皆綺麗な顔立ちだが、その中でも格別なジュゼが微笑んだ。


 つい圧倒されたミアが「何て奇麗なの」と呟いてしまうくらいで、それを聞いた双子たちがジュゼを警戒している。



「ちなみに、その双子は皇太子だ」


 付け加えるように言うべきではないような重い内容を、マルコが2人を指さしながら軽く伝える。



 ミアは双子を見て、目を丸くして絶句した。





「……アルカルの言葉も話せるんだな」


 マルコがミアに話し掛けた。

 


 絶句したミアを連れて応接室に移動し、先ほど席に着いたところだ。

 長方形の机を囲んで、ソファの一人掛けが2つ、二人掛けが2つ、其々向かい合っている。



 一人掛けに座ろうとしたミアだったが、二人掛けにミアを双子が挟むようにして3人で座った。

 出されたお茶をミアが何とか一口飲んで深呼吸した時だった。

 その向かいに1人でドカッと座っているマルコがミアに話し掛けたのだ。



「あ、はい。幼少期に隣接している国の言葉は習います。実践は初めてですが」


 それを聞いて、ルカが割って入ってきた。


「へぇ、すごい。しかし流暢だね。王族に萎縮することなく話せるし、度胸もなかなかだよね」


 話を振られたジュゼはうなずきながら、ミアを見た。 


「噂のご令嬢を見れるなんて光栄だよ」


 にっこり笑うジュゼに見とれそうになったミアを、両隣にいる双子が揺すっている。



「え、あの、私、噂に? なっているんですか?」



「スフィル辺境伯家には、恐いくらいに美しくて強い娘がいるって」


 ミアはスンと無表情になり、右手を少し上げた。


「あの、それ誤情報ですね。噂が、噂の噂になっていくうちに、色々変わったのでしょう。きっと、恐いくらいに強い娘かと」



「いや、合ってるだろ」


 マルコが身を乗り出し机に乗り掛かって、ミアの手を取ってキスをした。



「噂以上に奇麗だ。度胸も十分、俺の婚約者になるか?」


 ミアの手を握っているマルコの手を、双子が勢いよく叩き落とした。



「「絶対にダメ!!」」


 ミアは困ったように笑って、諭すように双子を止めた。


「冗談で言ってるだけよ」


 2人の頭をなでて、ミアは笑っている。



「ねえ、ミア、僕たちの名前呼んで」



 あ……とミアは気まずそうにうつむいて、手で顔を隠した。


 そちらの皇太子殿下たちに、自分の好きな食べ物しかも野菜の名前を付けて呼んでました、なんて口が裂けても言えない!!


 

「あの……どなたか、皇太子殿下たちの名前を教えて下さいませんか?」


 ミアは顔を隠したまま質問をした。



「候補はあるんだけど、まだ決まってないんだよね。双子は表向きは1人として活動するんだ。だから名前は1つなんだけ」


 ルカがそう言うと、双子が声を張って叫ぶように言った。



「俺がアーティ!」



「僕はチョーク!」



 ああ、大声で言っちゃった……



「ふはっ、アーティチョーク、ははっ」


「ジュゼが笑うなんてめずらしいね」


 ミアは自分の顔を覆っている手を余計に動かせなくなってしまった。

 美形のジュゼの笑い顔を見てみたいけれど、恥ずかしくて顔を出せない。



コンコン


 外で待機していた護衛が扉を開き、マルコの次の予定へ向かう時間になったことを告げた。

 マルコがため息をついて立ち上がる。


「さっきの話、冗談じゃないからな。考えとけよ」


 やっと手を緩めることができたミアに、マルコはそう言って、双子たちをせっせと左右に抱えて部屋から出ていった。


「「嫌だー! ミアの近くに居たい!!」」


 双子の皇太子たちのミアを呼ぶ声が、どんどん遠くなっていく。



 ミアはきょとんとして閉まった扉を眺めている。

 アーティチョークと名付けたことを知られてしまい、ミアは今は羞恥を覚えた記憶しか持ち合わせていない。



「何の話だったかしら……」



 ルカとジュゼが目を合わせ苦笑いしている。


 どうやらこのご令嬢は、自分の価値を全然分かっていないらしい。



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