表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/51

24…第2部、最終話

 春もすっかり落ち着いて、庭園では草花たちが楽しそうに咲き誇っている。



 先ほど、アルカル国からアーティとチョークへも通知が来た。


 内容は事前にスフィル辺境伯家へ届いた物と同じで、もう留学を終わらせてアルカル国へ帰国し、皇太子としての教育を受け、婚約者の選定をするようにと書かれていた。




 庭園に花を見にやって来たミアは、やはり考え事をしながら歩いてしまい、花が目に入ってこない。

 色とりどりの花が、風に揺れている。



「ミア! ここにいたのか」


 アーティが走って来て、ミアの手を取ってキスをした。


「どうしたの? 考え事?」


 次いでチョークも来て、ミアの手にキスをした。


「ええ、少し……」


 アーティとチョークと話すべきことがまとまらず、ミアは気まずくて少し視線を足下に落とした。



「さっきアルカル国に帰国するようにっていう王命を受け取ったんだ」


 チョークが説明すると、アーティが恐る恐るミアをのぞき込んだ。


「ミア。一緒に来てくれないか」



 ミアは心臓が跳ねたような気がした。



 けれど、答えは決めている。

 ただ、どう伝えたら良いのか、まだ言葉を探している途中だったのに。



 ミアはため息のような深呼吸をして、アーティとチョークに向き合った。



「私は一緒に行けないわ。ここに居る。2人は皇太子殿下なの。帰って……皇太子教育を受けて、婚約者も、決めなきゃ」



「ミア、それ本気で言ってる?」


 チョークが真剣にミアを見ていて、アーティは怒りも含んでいるような切迫した表情になった。


「勝手なこと言うなよ。婚約者はミアが」


「私たちは一旦離れないとダメなの」


 アーティの言葉を最後まで言わせないように、ミアは被せるように声を張り上げて話した。


「……きっと、親離れ子離れの時よ」


「俺たちはそんなんじゃない!!」


「ミアは僕たちを子どものように見てたの?」


 正直どうなのか、ミアは分からない。

 でも、2人と離れないと分からないこともあるのかもしれないと、先日ジュゼに言われてミアは思ったのだ。

 だから、ミアは嘘でもこう答えると決めていた。



「ええ……そうよ」



 ミアは涙があふれ出る前に、何とか言葉を出さなければならない。



ーー愛しているわ。



「だから、お互い距離をおいて、冷静に考えなきゃいけないの。近くにいると情に流されてしまうから」



ーーこの愛は、育ての親としてなのかどうなのか。



「近くにいたって、分かるだろ!!」


 アーティが必死にミアに向かって叫んだ。



ーー私が、ちゃんと向き合わなきゃダメなの。



「僕たちはミアのことが好きなんだよ」


 チョークの言葉に、ミアは涙を1つ落としてしまった。



ーーごめんなさい、時間が欲しいの。



 ミアはアーティとチョークの正面に立ち、姿勢を正して言葉を絞り出す。




「お別れです。お元気で」 




 いつか来る、その日まではと、1度も口に出さなかった言葉を、練習通りに言葉にした。



 そして、ミアは心を込めてカーテシーを贈った。



ーーいつか、私は今日のことを後悔するかもしれない。




 アーティもチョークも見るのが好きだったミアの美しいカーテシー。



 こんな形で自分たちに向けられる日が来るとは夢にも思っていなかったけれど。

 ミアの頑な態度を見て、アーティとチョークは何も言わず、伏し目がちにその場を去って行った。



 ミアの止めどなく落ちていく涙を見ることもなく。



 2人の姿が見えなくなってから、ミアはその場に座り込み、カイが見つけに来るまで動けずにいた。






 翌日、アーティとチョークはアルカル国へ向けて静かに出発した。



 その見送りの中にミアの姿はなかった。







第2部、完。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ