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18…ミアは動揺し、

 寒い冬が終わろうとしていて、少し暖かい光が部屋に入ってきている。


「お兄様、良い天気ですね。もう暖かくなるかしら」


 ミアがタツミに部屋で勉強を教えてもらっていて、今は休憩になったところだ。

 タツミは学園に通っていた時、勉強では上位にいたらしい。


「暖かくなってくれると野山が美しくなるから良いよね。最近は例の集団も静かだし、またピクニックにでも行こうか」


 タツミと目が合ったミアは目が輝いた。


「楽しそう! カイやジュゼ、猫たちも連れて行って良いですか?」


 ミアはニコニコで笑って嬉しそうにしている。


「え、ああ、勿論」




バンッ




 突然、仮面を被った集団が入ってきた。

 前回邸宅に侵入を許してしまってから、ここ4ヶ月は鳴りを潜めていたので久しぶりにミアは緊張した。


 この人数ならどうにかなりそうだけど、門の騎士たちは大丈夫かしら……


 前回は騎士たちも従者たちも内側からは来ないと油断していて、かつ身内を信用していたのもあって結構やられていたのだ。


 そして今回も邸宅内に現れた。前回で敵は洗い出したはずなのに。


「本当、人間不信になりそう」


 ミアは剣を構えて、次から次へと敵を倒していく。カイと同等の強さを持つミアには、数人程度なら自衛できるのだ。



「ぐっ……ミア、ごめん」


 タツミが斬られたのか、倒れてうずくまってしまった。


「お兄様!!」


 その時、変わった武器を持った敵が目の前に出てきた。

 紐のような、網のような物を持っている。

 それを広げ、ミアに投げ付けてきたのだ。


 ミアは逃げ切れず、それを切ろうとして剣が触れた瞬間、体が痺れるような力が抜けるような感覚に陥った。


「はっ」


 !! また、魔力封じ……


 しかも前回と比べて強力な物になっているらしく、ミアは全く動けそうにない。


 そんなに巷に出回っているわけでもない代物を何度も使用してくるということは、かなり入念な準備をして、理由はわからないけれど自分狙いだとミアは確信した。


 けれど、それを伝える相手も手段も、今は無い。



 自分がスフィル辺境伯家の枷になっているような状況が、ミアは本当に悔しい。





 例の集団が再び邸宅内に現れたと聞いたカイが駆け付けた。


「タツミ兄! 大丈夫か? 姉上は?!」


 手当を受けているタツミの所へ、血相を変えたカイが到着した。


「カイ、ごめん。ミアが連れて行かれてしまった」


 まだ血を流しているタツミの手当てを従者に任せて、カイとジュゼは部屋を出た。


 今回ジュゼは「今は魔力温存したいから」と治さなかったのだ。




 カイはロビーの大広間へ行ってミアを呼んだ。



 返事は無い。




「全く検討つかねぇ……どっから探しゃ良いんだ」






 誰かの足音が聞こえる。


 意識が戻り少しずつ目を開けたミアは、薄暗いここがどこなのか全く分からなかった。


 冬なのにここは暖かく、ミアは小さな寝台のような何かに寝かされていることは分かった。


 手錠の魔力封じなのか何なのか、体に力が入らず思うように体を動かせず、ミアは目を開けるだけで精一杯だ。

 視線だけを動かし、その足音の人物を見た。



 ……嘘よ



 ミアは目を見開いた。



「目が覚めたかい。外はこれから危険だから、少し一緒にここにいようか」


 その男はミアを見て平然と話し始める。


「ああ、そうだ。時間があるし、既成事実でも作っておこうかな?」


 嬉しそうにそんな話をしている姿が信じられず、ミアはゾッとして、首を力の限り振ろうとした。

 しかし、無情にも体は動かず、目にたまっていた涙が落ちていくだけだ。



 ミアは意識が混濁した状態で、自分が貪られそうになるのをただ見ているしかなかった。




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