14…想いが、
「ミアだ」
ジュゼがそう言うと、カイは走る足を早めた。
ミアは手錠のようなものをかけられ、10人近くの仮面をした人間に連行されているところだった。
「カイ、ごめんなさい!」
よく見ると猿ぐつわのような物もさせられていたようだ。
すぐに返事が返ってこなかった理由に気付いて、カイがブチ切れて抜刀した。
「姉上! 謝るのは後だ」
敵がミアの喉元に短剣を突き付けたが、カイは特に顔色を変えず見ている。
「お前が動いたら、切る」
そう言われると、カイは小声で「なめられてんな」とため息をついて下を向き、目線を足元から敵に向けた。目つきが別人のようだ。
「姉上、動くなよ」
カイの言葉に、ミアはただ笑顔だけで答えて、すぐ姿勢を正して目を閉じた。
一瞬カイが動いたと思ったら、ミアに短剣を突き付けていた男が、仮面ごと切られていた。
「そこは十分遠いと思ったんだろ? 残念だが、俺のリーチ内だ」
一瞬で、そこはまるでカイのために用意された舞台のようになった。
13才とは思えない剣舞のような剣さばきで、あっという間に全員を戦闘不能にした。
そして、ミアの手錠を外して解放した。
手錠にはミアの苦手な魔力封じが施されていることに気付き、カイはそれにも腹を立てて手錠を粉々に壊した。
「カイの剣筋は美しいね」
ジュゼにそう言われ、カイは照れてしまい口を真一文字にしてしまった。
ミアが「こんな照れてるカイを見るのは初めてだわ」とカイの顔を両手で包んで、嬉しそうにまじまじと見て、頬にキスをした。
「……姉上は絶対に嫁に出さねぇ」
「またそんな事を言うんだから。それよりも、助けに来てくれてありがとう。従者の中に敵がいたみたい。油断したわ。ごめんなさい」
ミアはアーティとチョークを拾い上げながら、悲しそうにカイに報告した。
信頼している身内に裏切り者がいたことがショックで、ミアはもふもふに癒やされようとしている。
身内しか知らない自分の苦手な魔力封じの手錠を使われたこともあって、ミアは心中穏やかでなく立ち直るのに時間がかかりそうだ。
「ジュゼが場所の特定をしてくれた」
ミアがジュゼの方を向いて、笑顔になった。
「助かりました。ありがとうございます」
スフィル辺境伯が留守中だったので、執事長が片付けをしている従者たちの指揮を取っている。
他の貴族の従者とは違い、侵入者への対処も慣れたものでサッと捕縛して地下牢に収容する。
女性の従者なら逃げられると思ったのか騒ぎ出した者がいたが、一瞬で気絶させられて運ばれていった。
スフィル辺境伯家の従者たちは老若男女関係なく皆、武闘派なのだ。
◇
コンコン
扉がノックされたので、ミアは目線をやった。
「あ、ジュゼさん。どうされました?」
ジュゼが来たのを見て、ミアはソファから立ち上がって近付いた。
「体調は大丈夫?」
ジュゼが心配そうにミアの頬に手で触れたので、ミアは静かに笑った。
「はい、お陰様で。ジュゼさんも大丈夫ですか?」
「……」
ジュゼから返事がないので、ミアは首を傾げて見ている。
「カイみたいに"ジュゼ"って呼んでみて」
「えぇぇっ……」
突然の思いもしないジュゼの発言に、ミアが緊張気味に戸惑っているのを見て、ジュゼは相変わらずの奇麗な顔でふっと短く笑ってミアの目を見た。
「ミアが無事で、本当に良かった」
ジュゼがミアの髪を耳にかけて直してくれたので、ミアはにっこり笑った。
「こちらこそ、ありがとうございました。ジュゼ、さんがいなかったら、結構危なかったです。もう屋外に出るところでしたから」
やっぱり呼び捨てにできないミアが苦笑いしていると、ジュゼが何も言わずミアを見てくるので、ミアは目を合わせて止まってしまった。
見つめ合う時間が過ぎていき、ジュゼがミアの手をとってキスをした。
「抱きしめて良い?」
「はっ?! な、何をっ」
突然、言ってくるのだろう、この美人はっっ。




