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11…第1部、最終話

 海の件があったので、外出は控えて過ごし、スフィル辺境伯領へ出発する日を迎えた。

 せっかく本当の故郷へ戻ってこれたのに再び出て行かなければならないアーティとチョークを、ミアは心配している。


「アーティとチョークは寂しくないの?」


「俺はミアと離れる方が悲しい」


「僕も。あ、パパにも会いたいな」


 アーティとチョークが生まれて3ヶ月のうち、スフィル辺境伯家でミアが2ヶ月育ててきたのだから、そんなものかもしれない。


「お父様は……元気かしら」


 ミアはチラッとカイを見ると、カイは「あー」と言いながら視線をミアから外した。


 きっと元気に娘の心配をしているのだろうと、ミアは遠い目になって従者たちに同情した。


 何も破壊されていませんように……





「すげー馬車だな。姉上、俺ちょっと見てくる」


 カイが目をキラキラさせながら何台も並んでいる馬車を見に行ってしまった。


 皇太子や第三皇子が出発するのだから、仰々しい見送りになっている。

 1台くらいで気ままに帰りたかったのにと、気が遠くなりそうなミアに、マルコが近付いた。


「元気で」


 マルコが手を出すと、ミアも手を出して握手して笑顔で応えた。


「第一皇子殿下もお元気で」


 マルコは握手を離さず、していない方の手でミアの頬に触ると、そのまま頭に手を回してミアを引き寄せ、キスをした。


「んん?!?!」


 ミアはパニックだ。

 箱入り令嬢で騎士より強いけれど、色恋沙汰には全く慣れていないので非常に弱いのだ。


 余裕のないミアだけれど、今カイがいなくて本当に良かったと思えたので、それくらいの思考回路は働いているらしい。



「「「はあぁっ?!」」」



「兄上! 何やってんだ?!」


 離れようとせず寧ろ更にかぶりつこうとしているマルコを、アーティがすぐに引き剥がしに駆け寄った。


「ミア! 僕たちしかしたらダメだからね」


 チョークが走ってミアに抱きついた。


 それを聞いて、マルコは残念そうな顔をしてため息をついた。


「何だよ、お前らもうしてたのか。初めてかと思ったのに」



「ね、猫の時でしょう?! は、初めてです!」


 ミアが焦って弁解している。誰それ構わずしているみたいに言わないで欲しい、と。


「そうか、なら俺の事を忘れないよな」


 そんなやり取りをしている後から、怒りを隠さず近付いて来ている人物が。



「ねえ……何してるの?」



 目が据わっているジュゼが、マルコに少しずつ近寄ってすごんできた。


 ジュゼの片手がほのかに光っている。

 相当強力な魔力を練っているのか、それは徐々に空間を歪ませているように見える。


「本当にすまない! もうしない! だから、それを鎮めてくれ」


 危険そうなそれを向けられる前に、マルコには謝るの一択しかなかった。



「あれ? どうしたんっすか?」


 全く場が収まっていない時に、カイが現れてしまい、ジュゼ以外に緊張が走った。


 自分を持ち直したミアが、カイに駆け寄った。


「っ! カイ! 待ってたのよ。乗りましょう?」



 ミアとカイは一通り挨拶を済ませると、カイは嬉しそうにエスコートしてミアを馬車に乗せた。


「すげー! 空間魔法か。中が広くなってんな」


 馬車は普通の4人乗りサイズだけれど、中に入ると4倍程度の高さと広さになっている。

 馬車移動が好きではないカイが喜んでいる。


「素敵だわ。これなら移動が苦じゃないわね」





 出発しようとしている馬車を見ながら、ルカがマルコに説教をしている。

 そろそろ自制を知れと。


「記録装置を゙兄上が持っていて良いから、おとなしくしてて」


 ミアが最後に笑った顔がとにかく可愛い映像が入っている、あの記録装置を。


「わかった……ジュゼが、マジで1番恐かった」


「確かに。あんなジュゼ、僕も初めて見た」



 ミアが関わることで、皆が知らないジュゼがどんどん出てきて人間らしくなる。

 次会う時は果たしてジュゼがどのようになっているのか、ルカは兄として楽しみのような、恐いような。


 アーティとチョークもいるし、一波乱はありそうだけれど……


 スフィル辺境伯家でどうか大事になりませんようにと、ルカは薄い目であまり期待せずに祈った。



 誰も送り返されませんように……




 それぞれの想いを乗せて、スフィル辺境伯家へ。



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