後日談if
日間1位獲得御礼小説。
この後を気にされている感想を多くいただきましたので書いてみました。ギャグテイストですすみます。
カッコいいマリアはいませんけど最後あたりにはいます←
まさかの結末になってしまいましたが、可能性の一つとして考えていただければ。
※あくまで番外編です。気軽な気持ちでお読みください。
※名前が正式なものと混じるとややこしくなったのでシェリーとマリアで通しています。
あくまで番(以下略)
この日、マリアは非常に機嫌がよかった。
普段は路傍の石に等しい他人(※兄)にも満面の笑顔で挨拶できるくらいに浮かれていた。
なぜなら、今日はシェリーが王宮に宿泊できることになったのだ!
現在、シェリー(とその兄であるアベル)が今この国に滞在している。
表向きは明日開催される兄の誕生日パーティーに父親の名代として参加するため。
真実はあれこれと話を聞こうと誘われるお茶会を避けるためではあるが、正直理由はどうでもよい。
シェリーが来る、それだけが大事。
「あの本に書かれていたことが実践できますわ……!」
あの本――「ともだちのつくりかた」、最終章に書かれていた「お泊り会」の実施である!
準備① 「美味しいお菓子でもてなそう」
マリアは料理もできる。姿が変わってからは食に関して困ることはなくなったが、他人の手の入った食事がどうしても気持ち悪くなる時がある。そんな時に自分で作って食べるようになった。
面倒な他人(※家族)と顔を合わせてご飯を食べなくてもよくなるので、マリア的には非常に楽だと気付いてしまったのだ。
以後ちょくちょく厨房を貸してもらうようになり、せっせとスキルを磨き上げた。
(厨房に妖精がたまに現れる、と厨房への志願率が爆上がりしたのは余談である)
シェリーとの夜食に出すのは何度も練習を重ねたお菓子。
思い出のイチゴタルトである。
夜中に食べるにはハイカロリーだが「夜にお菓子を食べるのは罪。その罪を共有することで仲がさらに深まるのです」と書かれていては実践しない手はない。
丁寧に焼き上げたタルトと細心の注意を払って飾り付けたイチゴ。
シェリーに食べてもらうのにふさわしいものができた、とマリアもご満悦。
味見用に作っていたタルトは厨房周りをうろうろしていた不審者(※兄)へ。
ニコニコして食べている姿をじっくり観察。
うむうむ、元気だ。良かった、と頷くとそのまま部屋に向かう。
準備② 「おそろいの寝間着を用意しよう!」
マリアは燃えた。オーダーメイドの寝間着をつくるため、シェリーに似合うデザインから考えた。自分の分はどうでもよかったが、色だけは譲れなかった。
茶色一択である。
デザイナーに考え直してくれと頼まれても頑としてはねのける。
でも、自分だけ色味が地味だとシェリーが気後れするかもしれない、と思い生地にこだわってみた。
結果、寝間着とは思えない値段になってしまったが、誕生日でもないのに贈られる宝石を売りさばくつもりでいる。
経済も回るしシェリーはかわいい。最高である。
さて、自分がやるべきことはやった。あとはシェリーを迎えるだけだ。
時計を見ながらそわそわとしていたら、メイドがシェリーを連れてきた。
さぁ、お泊り会の開始である!
マリア自らサーブしたイチゴタルトをシェリーは非常に喜んだ。
「マリアと最初に会ったときみたいね」とニコニコしながら食べているシェリーを見ているだけでマリアは幸せになる。
(タルトの毒見もきちんと済ませておいてよかった)
王都はどのあたりを観光したのかなどのとりとめもない話をしていると、楽しい時間はどんどん過ぎていく。
そういえば、確か昨日は……
「お兄様と美術館に行ったのよね?楽しめたかしら?」
マリアの問いに、シェリーは困ったように笑う。
「とても優しかったし楽しかったよ。でも、カイン様は美術の造詣が深くいらっしゃるから、私とでは楽しめなかったかも」
—―終了。
この瞬間、マリアは兄に見きりをつけた。
シェリーに気を遣わせる男はナシなのである。
ならば次。
「もう、シェリーにそんなことを思わせるなんて。困った人ね。そういえば、シェリーは年齢にこだわりなどあるのかしら?」
傷心のシェリーにこういう話を振るのは申し訳ないが、良い人を見つけるには少しでも早いほうが良い。
「そうね……。こだわりなどはないけれど。年上の方がよい、かな」
あぁ、頬を染めるシェリーは本当に可愛らしい!
……あら、でも、もしかして?
「あら、だれか思い浮かべた方がいらっしゃるの?」
「正直、ああいうことがあったばかりだから、直ぐには切りかえられないけれど。婚約披露宴のとき、周りの視線からずっと盾になって下さったかたがいたの。寡黙な方だけれど、視線がとっても優しくて。背中にもとても安心感があって……。次に恋をするなら、ああいう方が良いなって思うわ」
(――なるほど。
あの時シェリーのそばにいた人で、寡黙といえばアイスヴェルド侯爵子息かしら)
三男で継ぐ爵位はないものの、次期騎士団長の呼び声高い能力と人望があったはず。
きちんと調べないといけないけれど、もしシェリーを任せるのにふさわしい人物ならば。
手始めに、帝国と話をつけましょう。確か二番目の姉が第一王子を気に入っていたはず。裏で話をつけて、表向きは私のわがままで婚約者を交代したようにしましょうか。
わがままで婚約を二度駄目にした、となればさすがに嫁ぎ先は限られてくるでしょう。
弱小国の、伯爵家に嫁ぐのが可能なくらいには。
ぽとん、と紅茶に角砂糖を落とす。
まるで運命の賽のように。
「どうしたアベル?」
「今、僕の意志とは関係なく、運命が決められたような音がした」
ざ ん ね ん 逃 げ ら れ な い !
皆さま、感想&ブックマーク等、本当にありがとうございました!