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59.銭湯で湯上りにコーヒー牛乳とか飲むおっさんかよ!

「あとさ。気になったんだけど、ジノンって、ボクの先行機の使用者だったりした?」


「そうだよ! その先行機の、唯一の使用者だって聞いてる」



 正直、この質問に、ボクは答えてくれるとは思っていなかった。

 他人の前世のことなんて天界のトップシークレットじゃない?

 答えてくれたらラッキー程度のモノだったんだ。

 ある意味、カマかけに近い。


 ところが、これにハルは、即答してくれた。

 女神ピルバラナ様の関係者にしては、ちょっと口が軽いとも思ったけど、これは、ボクにとってジノンと例の女性のことを知るチャンスだ。

 ジノンには悪いけど、聞けることは出来るだけ聞いておきたい。



「ジノンは、前世でも今みたいな巨根イケメンだったりしたのかな?」


「凄い美人さんだったって聞いてるよ?」


「えっ? もしかして女性?」


「そう。HPが98もある女性。勿論、ここで言うHPはヒットポイントじゃなくてハレンチパワーね」


「マジで?」



 今のジノンもそうだけど、HP98って言ったら、人工物ファクターの無い人間としての、ほぼ最高値だ。

 多分、二次元から飛び出してきたレベルで綺麗なんじゃないかな?


 しかも、その美女とボクの先行機が百合プレイをしてた?

 三次元女性に興味が失せたボクだけど、正直、それは見てみたいな。



「じゃあ、その前世のHPを現世に持ち越したって感じなのかな?」


「前世のHPと現世のHPはリンクしないけど……。ルカだってそうでしょ?」


「たしかに。前世じゃ平均値以下かも。今は異常値だけど」


「ただ、ラヤの知り合いだったんでHPは持ち越ししてくれたみたいだね」


「知り合い?」


「厳密には、ルカの先行機とラヤが知り合いで、その先行機を通じて知り合ったってことだけど……、さすがに、これ以上は話せないか」



 一応、何でも答えてくれるってわけでは無さそうだ。

 話せる内容とそうじゃない内容の境界線が何処にあるのかは、ボクには分からないけど。



「あと、もう一つ、追加質問。恥天使、死天使、坐天使って話があったけど、帝国の吸血魔女ネーゲルは、ナントカ天使とかってなってるのかな?」


「基本的にサキュレントの部下で天使が付くのは、異世界召喚者だけみたいだね」


「そうなんだ」



 前方に島が見えて来た。

 あれがウラドラ島だ。


 ウラドラ島はハイテイ市の西北西に位置する島で、無人島だ。

 魔獣の宝庫……と言うか巣窟とされている。


 その島のど真ん中に、ボク達を乗せた紅龍が降り立った。

 ただ、さすがに龍の襲来だからね。

 魔獣共は近付くどころか、むしろ付近から逃げて行くこと間違いない。



 紅龍が降りたところには、既に白龍と緑龍の姿があった。

 女神ピルバラナ様は、バージェス世界からハルと紅龍だけではなく、これら二体の龍も召喚していたってことだ。


 ただ、紅龍に白龍に緑龍って……。

 白發中かよ!


 やはり、ボクがアサスズメ王国にいるから、敢えて黒龍、青龍、黄龍を選ばずに、洒落で紅龍、白龍、緑龍を召喚したんだろうか?

 厳密には、發を『アオ』と言う人はいるし、ローカル役満で『黒一色』とか『青の洞門』なんてのもあるけどさ。



「もしかして、女神ピルバラナ様って麻雀が好きだったりする?」


「何で?」


「龍の色が、白、緑、赤だから。麻雀牌で白發中ってのがあって、それで」


「たしか、ラヤは、麻雀はヤッタことが無いし、よく知らないって言ってたよ。だから、人間時代に麻雀の麻雀による麻雀のための政治って異世界に行かされた時は、マジでキツかったって」


「はぁ? そんなアホな異世界があるの?」



 さすがに、ボクの声が裏返った。

 異世界広しとは言え、そんなおフザケのヒドイ世界があるとは、余りにも非常識だ。



「うん。今では、世界統一大統領にマトモな人が就任して、ちゃんとした政治に切り替わっているけど」


「そうなんだ……。それと、ちょっと気になったんだけど、女神様って、人間時代に複数の異世界に行ってるの?」


「たしか、全部で十七カ所? 前世分……地球を入れると十八カ所だったかな?」


「マジで?」


「うん! ただ、ラヤの前々世とか、そのさらに前世とかは、どの世界にいたかは私も本人も知らない。多分、地球だと思うんだけどね」



 たしかに、前世にどの世界にいたかなんて、通常は記憶が無いから分からない。

 知っている方が異常だ。


 しかし、ラヤ時代に、そんなに異世界巡りをしていたとはね。

 異世界転移のプロだね。



「じゃあ、ここで三体の龍の血を浴びてもらうね」



 唐突に、ハルは、そんな物騒なことを笑顔で言う。

 ちょっと心臓に悪い。

 ボクの身体に心臓は無いけど。



「血を浴びるって?」


「それで身体強化するの」


「ナニそれ?」



 でも、そう言えば、地球時代に、何かの物語で、龍の血を浴びて不死身になった話ってあったな。

 まさに、今回、それをボクに対してやろうってことか。



「龍の血を浴びれば、焼かれる心配は無くなるから」


「なるほど。そう言うことか」


「本当は、私の血を浴びるだけで済めば、ラヤも私だけを召喚するだけで良かったんだけど、この身体じゃない? さすがに浴びせるほどの血は無いからさぁ」


「でも、光龍なんでしょ? 別にハルに血を出せって言う訳じゃないけど、龍の姿にはならないの?」


「なれないのよね」


「そうなの?」



 たしかに、人間の身体で何リットルもの血を出すわけには行かない。

 それで、白發中トリオが代わりに血を出す係りになってくれたんだろうけど……。

 でも、光龍なのに、何で龍の姿になれないんだろ?



「言ってなかったけど、実は、私達って、バージェス世界に最初からいる存在じゃなくて、人々の念から生まれたモノなのよ」


「念?」


「つまり、人々が勝手に光龍とか闇龍の伝説を作って、それが何千年にも渡って語り継がれているうちに思念体として誕生したのよ」


「そんなことがあるの?」


「うん。心のエネルギーってのは凄いのよ。だから私達が生まれたの」


「そうなんだ」


「ただ、私が誕生する少し前に、光龍を擬人化する人がいて……。それで私だけ、何故か人間の姿なのよね」



 一瞬、言葉を失った。

 何処の世界にも擬人化して喜ぶヤツがいるってことか。

 しかも、敢えて美少女型に!

 ある意味、ハルも、その被害者ってことだ。



「でも、人間の姿のままじゃ闇龍と戦うのって厳しくない?」


「半世紀ちょっと前のはキツかったけど、それ以外は余裕だったよ!」



 これもハルは、屈託のない笑顔でサクッと言う。

 見た目は可愛らしい少女だけど、中身はとんでもない破壊神のような気がする。



「そ……そうなんだ」


「うん。じゃあ、そろそろ始めるよ。服を脱いでもらえるかな? 服に付いた血は洗っても落ち難いから」


「そう言う理由?」


「うん!」



 全身を隈なく血で染めるために、全裸になる必要があるって思っていたけど、そうじゃなかったんだ!

 たしかに、血は落ち難いけどさ……。



「でも、ワザワザ来てもらったところ恐縮だけど、他の龍種じゃダメなの? ワイバーンとか」


「超伝説級の龍じゃないとダメだって。この世界の龍なら古龍とか。そもそもワイバーンで身体強化できるんだったら、ルカがワイバーンを納めたギルドの解体班の人達が身体強化されてるんじゃない?」


「あっ! たしかに。でも、ボクがワイバーンを討伐したって、何で知ってるの?」


「それもラヤから聞いた」


「そうなんだ……。でもさぁ。ここでボクに龍の血を浴びろってことは、ボクに、その坐天使とも戦えってこと?」


「そうだよ。その身体として生まれた以上、それが義務だってラヤが言ってた。だから、ラヤにも『その身体で後悔しないか?』って聞かれてるでしょ?」


「そう言う意味?」



 それって、かなりの説明不足なんだけど!

 ある意味、詐欺……って今更ながらに思う。



「まあ、どっちにしても、サキュレントはルカに刺客を差し向けて来るでしょうから」


「えっ? マジ?」


「だって、恥天使と死天使を倒したんだから当然でしょ?」


「まあ、そう言われれば……」


「だから、身体強化は、しておいた方がイイと思うよ。積極的に坐天使と戦おうと、戦うまいと」



 たしかに、ハルの言う通りな気がした。

 こっちに戦いの意思があろうと無かろうと、向こうから来る可能性があるのなら、仕方がない。

 観念するしかないな。

 ボクは、服を脱ぐとアイテムボックスに収納した。



 そう言えば、今更だけど、ハルはボクのことを殺意のある目で見たりしないなぁ。

 白發中の龍達も、オスだと思うけど、別に欲情してこない。

 多分、通常の生物を超越した存在だからなんだろう。



 三体の龍が、ボクを取り囲んだ。

 なんとなく4Pを連想させる。



『取説君:ルカ‐0721号は、物事をエロと絡めて考える傾向があります』



 ボクから見て、向かって右側に紅龍、左側に白龍、後ろに緑龍。

 そして、紅龍が白龍の腹に、白龍が緑龍の腹に、緑龍が紅龍の腹に、それぞれ右手の爪を深く突き刺した。


 爪を抜くと同時に、三方向から噴き出す龍の血。

 それが、ボクに頭から顔面シャワーの如く派手にかかった。

 一瞬にして、ボクは全身が白い液体……じゃなくて血で真っ赤に染まった。


 しかし、数秒後に血は止まった。

 ふと、ボクが顔にかかった血を腕で拭って龍達を見上げると、彼等は右手を腰に当て、左手でビンを持ってポーションを飲んでいた。



「えっ? ポーション?」


「ラヤがくれたんだよ。用意がイイでしょ?」


「まあ、そうだね……」



 非常によく効くポーションだったようで、一瞬で傷が塞がったわけだけど……。

 ただ、この飲み方。

 銭湯で湯上りにコーヒー牛乳とかフルーツ牛乳を飲むおっさんかよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] >しかも、その美女とボクの先行機が百合プレイをしてた? >三次元女性に興味が失せたボクだけど、正直、それは見てみたいな。  なお、途中からとても大きな変化があった模様(どう変わったかはネタ…
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