99 パーティーへの招待
光が溢れる部屋の片隅で、エマはぼんやりと頬杖をついた。
目の前では、ヴァルが木箱をひっくり返しながら、新学期の準備をしている。
陽の光に照らされる黒髪は、どれだけ見ていても飽きない。
パーティーに出ることになったから、今、こんなに静かな学園に居られる。
こんな時間ができるなら、パーティーに出るというのも悪くない。
パーティーに出てしまえば、エマも家へ帰ることになるから、こんな時間ももうすぐ終わってしまうのだろうか。
そんなことを考えながら、ぼんやりとヴァルが動く姿を見ていた。
昼前にはヴァルが教室へ荷物を運ぶのを手伝いながら、一緒に階段を下りた。
昼食は、エマが牛丼を作った。
夏休みの間は、授業もないのでお弁当は頼んでいない。
昼食時には、シエロもヴァルも食堂にやって来た。
食後のお茶を飲む頃になって、シエロが口を開いた。
「そろそろパーティーの話をしようか」
そう言ったきり、シエロは無言でミルクティーを飲んだ。
ヴァルは黙っている。
食堂の中は、とても静かだった。
シエロは言葉を選んでいるように見えたし、言いにくそうにも見えた。
ミルクティーがすっかり冷めた頃、シエロが観念して口を開いた。
「この近くに、シュバルツ伯爵邸というのがあってね」
…………え?
それって……ジークの家……?
じ……っとシエロが口を開くのを待った。
ジークの家に……行けるっていうこと?
「…………」
ヴァルがじっと、エマを見ていた。
「パーティーを招待してくれたのはその家なんだ。……ヴァルの家だ」
「…………え?」
エマは、シエロを見たまま目を見張った。
「…………えと……え???」
ヴァルが……ジークの家の人間……?
公式設定資料集によると、ジークはシュバルツ家の長男。弟が一人。
……子供がいる設定ではなかったから、弟ということ?
けれど、弟は7歳だったはずだ。今は、22歳。
そこで、エマがハッとした。
ヴァルは、エンディング後に生まれたエマと同じ年齢だ。
つまり、さらに弟……?
「ヴァルは、シュバルツ家の三男なんだ」
ビクッ、とエマの身体が微かに跳ねる。
エマは、ゆっくりとヴァルの方を見た。
ヴァルの真剣な顔が目に入る。
「…………」
そうだ。
こうして見ると、ヴァルはジークと似ている。
顔も、雰囲気も。
髪の色だって、瞳の色だって。
あの刺さるような目つきも。
「何日か泊まっていくよう言われている。……お言葉に甘えて、2日程泊まらせてもらおうかと思う。出発は、2日後。準備しておいて」
シエロの声も表情も、いつもとは違うものだ。
「わかりました」
エマはそう言ったけれど、どうしても違和感が拭えなかった。
……どうして。
どうして、この二人はこんなにも真剣なんだろう。
ちょっとばかりの混乱を鎮めようと、紅茶を一口。水面を見る。
ライトの明かりが反射して、ゆらゆらと白く光る。
時間はゆっくりと過ぎていって、二人が食堂を出る気配がして。
気付けば、食堂に一人だった。
そろそろ部屋に戻ろうかと思った矢先の事だった。
食堂の扉が開いて、そっと、シエロが入ってきた。
音も立てず、そっと扉を閉める。
唇に人差し指を押し当てると、静かに、という仕草をする。
「…………」
そのまま押し黙っていると、シエロが音も立てずに近付いて来た。
エマのそばまで来ると、頭を傾け、口に手を添えて、エマの耳に囁く。
「話がある。今夜、僕の部屋に来て。……いつでもいい」
う……うわ……。
耳を抑える。
顔が火照るのがわかる。
……って、興奮してる場合じゃない……。話って……。
ふいっとシエロの顔を覗くと、とても優しい瞳と目が合った。
シエロはそのまま、また音も立てず、食堂を出て行った。
いよいよパーティーエピソード開始です。
このまま恋愛展開で突き進むよー!




