92 帰途(1)
双子を残して、学園のメンバーが帰る日がやってきた。
双子とその家族は、家族総出で見送りに出てきてくれた。
「リナリ〜」
チュチュとエマがリナリにハグする。
「学園で待ってるからね」
「うん」
リナリが、幸せそうな顔でハグを返した。
「メンテもまたね!」
と、チュチュとエマが一人ずつ、メンテにハイタッチを決めた。
族長達に挨拶をすると、また双子の兄のカメリアに連れられ、気球の停留所へ向かう。
森へ出て、村から離れると、やはり少し寂しく思う。
停留所まではあっという間だった。
カメリアに別れの挨拶をすると、カメリアは少し、申し訳なさそうな顔をした。
「弟と妹を頼む」
一人一人に丁寧にそう言った。
気球では、また二手に分かれる。
戦力分散のため、シエロとヴァルは必ず別だ。
エマの隣にヴァルがいたので、自然とエマとヴァル、チュチュとシエロという形になった。
気球が浮かび上がる時、エマは村の方を見ていた。
「ヴァル!神殿が見えるよ!」
村の方角を眺める。
延々と広がる森の中に、うっすらと白い建物の屋根が見える。
「ああ、いい所だったな」
「うん。花が咲いてる時に、また来たいな」
「そうだな。次は、もっと早い時期に来よう」
あの桜の下でみんなでするお花見はきっと楽しいだろう。
エマは、桜の木の方角に向かって、大きく手を振った。
帰りの旅は順調だった。
問題なく、気球は降りたし、馬車も返ってきた。
帰りも、山の頂上でキャンプをする。
山の頂上には、相変わらずかろうじて柵はあるものの、誰もいなければ明かりもないただの森の中の広場だった。
チュチュとエマが、キャーキャー騒ぎながらバーベキューをした。
双子がいないのはやっぱり寂しくて、紛らわせようと二人で騒いだ。
食後。
すでに陽は落ちて、空には星が覗いていた。
「じゃあ、」
とシエロが言いかけると、ヴァルが、シエロを睨みつける。
「夜の番は俺とシエロ、二人でやるよ」
そう言ったのはヴァルだった。
シエロがにっこりと笑った顔のまま固まる。
どうやら行きのキャンプで3人で寝ていたことをまだ根に持っているらしい。
「お前はもう馬車には入れないからな」
と、シエロに凄んだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて〜」
と、チュチュがエマを連れ、馬車の中へ入って行く。
焚き火のそばには、ヴァルとシエロ、二人だけが残った。
「交代で寝ればいいだろ。寝る時はその辺に転がってろ」
「はは……」
とシエロが乾いた笑いを漏らす。
大きな杖に寄り掛かり、焚き火の火を見つめた。
「右」
ヴァルに言われて、すかさずシエロが杖を手に持ち、
「天上への贄」
と声を上げた。
シエロが手に持つ杖の上に魔法陣が輝き、弾けるように消える。
遠くで、地面に水が広がり、そこから鋭く尖った大きな氷柱が、何本も天上へ向けて突き上げる。
その氷柱に突き上げられた、鋭い牙を持つコウモリが、地面にドサドサッと落ちた。
また、夜の静寂が戻る。
シエロくんは範囲魔術が得意。攻撃力も高いです。さすが天才少年!




