91 村の夜
村にランタンが灯る。
その日は、村を挙げての祭りの日だ。
学園のみんなも、村祭りの中心である、広場での宴会に招待されていた。
双子以外は、翌朝帰途につく。今日は、この村での最後の夜だった。
陽が落ち、夕暮れも過ぎる頃。
学園のみんなも、その日は民族衣装を着せてもらった。生成りでできた服に、独特な紋様が飾られている。
女の子たちはみんなワンピース。それぞれ三つ編みに、金色の髪飾りをつけた。
リナリはポニーテールを三つ編みに、チュチュはツインテールをそのまま三つ編みに、エマはおさげの三つ編みにした。
金の飾りのついた、シャラシャラと音が鳴るサンダルで外に出ると、神殿の前には、ヴァルとメンテがすでにそこにいた。
同じく金の飾りのついた、シャラシャラと音が鳴るサンダルで踵を返し、ヴァルがエマの方を向く。
ランタンの灯りの中、振り返る姿に見惚れる。
仄かな色に照らされる黒髪と、深い瞳。
咄嗟に何か言わないと、と思い、口を開いた。
「え……と、似合ってる、ね」
照れ隠しに、「えへへ」と笑った。
メンテは、さすがここの出身というだけあって民族衣装も着こなしている。
みんなで集まって、広場に向かって歩き出す。
ヴァルは、「…………うん」と小さく呟くと、エマに手を差し出した。
ん……?
掴めばいいのかな。
ヴァルの手の上に手を置くと、きゅっと握られる。
手を引かれ、歩き出す。
うん……?
なんか……すっごく恥ずかしいんですけど……?
暗いから顔見えない?
見えないことになってて欲しい……。
ヴァルを横目で見る。
こんな風に手を繋いで歩いたこと、ずっと前にもあったけど……。あったけど。
……こんなにはくすぐったくなかった。
広場は、一際多くの灯りの中、広い敷物の上に沢山の食事が並んでいた。
シエロはもうすでに族長の隣の席を陣取って、楽しそうに話をしている。
シエロの隣に、双子が並ぶ。その隣に、チュチュ、エマ、ヴァルが座った。
「綺麗だね」
ヴァルが、エマの方を見る。
ランタンの灯りが、仄かに二人を照らし出す。
近くで、村の楽団が奏でる音楽が聞こえる。高い笛の音が響く。
エマが、ふふっと笑うと、
「…………ああ」
と、眩しそうな顔をしたヴァルが一言だけ口にした。
沢山の人の挨拶と食事が進む。
「この野菜、おいしかったよ」
「お前これ好きそう」
「肉団子!美味しいよ〜。昨日村で作り方教わったやつだと思う」
「村に行ってたんだな」
「三人でお手伝いしてたんだ」
ヴァルと二人、きゃっきゃしながら御馳走を食べる。
ざわざわと騒めきが大きくなってきたところで、楽団の音楽が、一際大きくなった。
村の子供達が、いそいそと中心に駆け込んでいく。
それがダンスの始まりの合図だった。
子供達のはしゃぐ声が響く。
老若男女多くの人が広場の中心に飛び出していったところで、うずうずしていたチュチュが、隣のリナリとエマの手を掴んで立ち上がった。
「アタシたちも行こう!」
戦いに挑むかのような勇姿。
「うん!」
次に勇ましい姿を見せたのは、リナリだった。
三人で手を繋いで中心へ飛び出していく。
ランタンの灯りの中、子供達の踏むステップを見様見真似で真似ながら、三人で手を繋いで踊った。
笑い声が、星空に響いた。
旅行エピソードも残り2話。
その後は怒濤の展開が続きます。お楽しみに〜!




