87 トーラリスの村
「兄さん!」
メンテとリナリが声を上げる。
二人の兄弟なんだ……?
ずいぶんと背は高くがっしりしているけれど、確かに、似ている。
「私は、カメリア。メンテとリナリの兄だ」
「……似てる」
と、呟くと、隣でヴァルが「そうだな」と小さく言った。
森は果てがないと思えるほど続く森だった。
どちらの方を見ても、ただの森だった。
学園があるグラウの森ほど明るくもない。かといって嫌な暗さもない。華やかさもなく、だからといって綺麗でないわけでもない。ただ、そこは遠く遠くまで森だった。
森の中をひたすら歩いた先で、その光の中に踏み出すと、その瞬間、突然明るくなった気がした。
「え?」
咄嗟に顔を上げる。
人の騒めきが聞こえる。
目の前に広がるのは、大きな村だった。
大きな木があちらこちらにそびえ立つ。その木々の袂に、緑の草でドームのようなものが取り付けられていた。どうやら、それが家になっているようだった。
「こんにちは」
「こんにちはー」
村の大人達と口々に挨拶を交わす。子供達は、走ってきて様子を窺ったり大人の後ろに隠れたり、いろいろだ。
カメリアが、そのまま村の奥へ案内してくれる。
歩いていくと、村の奥。木々がまばらになったまたその奥に、大きな白い神殿が建っていた。
大きな柱が立ち並び、荘厳としか言いようがない、大きな神殿だ。
それが、トーラリス族の中心である神殿だった。
「宿泊は、ここの予定です」
みんなで神殿を見上げる。
ここに?
修行でもするんだろうか。お寺に泊まるようなもの、かな?
なんて考えていると、通されたのは、神殿の奥にある宮殿のような場所だった。
高い天井。大理石の床。そして、溢れかえるほどの金色の壺や調度品。赤い絨毯。
「うわぁ……」
思わず声が出る。
そこで出迎えてくれたのは、これまた上等な民族衣装に包まれた男性と女性だった。
顔を見て、直感する。
もしかしてこのお二人は……。
「紹介するよ」
と言ったのは、やはりメンテだった。
「うちの父と母だよ。父は神殿を守る長なんだ」
やっぱり、ご両親!
長、ということは双子は族長の息子と娘なんだ……。
シエロが頭を下げ、挨拶をした。
「この度は招待いただき、感謝いたします」
シエロの目つきが変わる。真面目な顔だ。金色の髪が揺れる。
それは、一瞬、心臓が波打つほどの綺麗さだった。
食事でもてなすと言われ、通された部屋は、中庭と繋がっているテラスのような場所だった。そこに大きな大理石のテーブルが置いてある。大きな金の燭台が映える。
テーブルについたメンバーの人数は、思った以上に多かった。
双子の両親、それに双子の兄だという人がカメリアも入れて5人、姉だという人が3人。合計で10人。
家族だけでこんなに……。
つまり、双子は12人家族なのだ。
一瞬、両親のどちらかが違うとか……?なんて思ってしまったけど、そういうわけでもない。
家族はどう見てもみんなそっくりだ。
双子は家族の中でも華奢な方に見えた。けど、どう見ても家族全員似ている。
そして、テーブルに並ぶ、ご馳走の数々。やはり森で獲れるらしい鳥料理などがメイン。果物も豊富だ。
思った以上のもてなしを受けて、泊まる部屋も凄かった。
ベランダへ繋がる大きな窓の付いた部屋。部屋のど真ん中には大きなベッドが据えられている。
……この世界では、このサイズのベッドが標準なんだろうか。
5人くらいで寝られそうなベッドに、割り当てられたのはエマとチュチュの2人。
やっぱり男子部屋もこうなのかな、なんて思いつつ。
けど、シエロとヴァル、2人が仲良くベッドに入る想像はできない。
寝る前に出されたお茶をチュチュと飲んでいるところで、コンコン、と扉がノックされる音が聞こえた。
「はーい」
エマが返事をしながら扉を開けると、そこに立っていたのはリナリだった。
ピンクのくしゅくしゅとしたルームウェアに、大きな白い枕を持っている。
「リナリ」
名前を呼んで軽くハグすると、3人で大きなベッドへ転がった。
この世界ではあまり精霊を神のように祀ることはありません。トーラリス族も、精霊の守護者として側にはいますが、神のように信仰しているわけではないようです。




