77 森からの招待
夏休みも直前。ジワジワと暑い日が続く。
夏休みには2ヶ月ほどの休みがあり、大体は帰省に費やされる。
そんな夏の、朝食の時のことだった。
みんなに声をかけたのは、意外なことに、メンテだった。
「もしよかったらでいいんだけど、うちの両親が、遊びに来ないかって言ってるんだ」
「メンテ……と、リナリの家?」
「そう。ちょっと遠いんだけど」
と、言いながら、メンテは少し笑った。
「そう……」
と思案顔になったのは、シエロだ。金色の睫毛を伏せる。
すぐに顔を上げて、「いいよ」と答えた。
「僕が付き添うから、誰が行くことになっても大丈夫だ」
と、みんなに顔を向けながら言う。
「アタシ!いく!」
はーいと大きく手を挙げたのはチュチュ。
「招待されてるパーティーには問題ないですか?」
夏休みには、ヴァルと二人、ダンスを踊る予定になっている。エマが問うと、
「大丈夫だよ。その分、帰省は出来ないけど」
と、困ったような笑顔が返ってきた。
「じゃあ私も参加で」
「うん。俺も」
と、全員で、招待されることになったのだった。
メンテとリナリの家は、国境の向こう側だ。
その1週間後。夏休みに入るのと同時に、6人は旅行に出かけることになった。
「エマ、かわいいー」
当日の朝、食堂に入ってきたエマに歓声を上げたのはリナリだ。
「リナリもかわいいよ」
2人は新しい服を着ていた。おろしたての夏服だ。
エマは、町の仕立て屋で仕立てた服。白いブラウスにワインレッドの編み上げスカート。首元には赤い宝石のついた金色のリボン。いつも通りのハーフアップのヘアスタイルに、ヴァルが選んでくれた茜色のリボンを着けている。
リナリも、チュチュとエマにあーでもないこーでもないと仕立て屋で着せ替え人形にされた挙句、仕立ててもらったワンピースを着ていた。
食堂ですでに朝食を食べ終えていたヴァルが、エマに目をやる。目に入った首元のリボンを見て、「いいじゃん」と笑った。
そこへ、食堂へ飛び込んできたチュチュが、飛び込むなり、くるりとターンして、ポーズを決める。
「じゃーん」
チュチュも、仕立て屋で仕立てたばかりのブラウスと鮮やかな緑のジャンパースカートを着ていた。
「かわいー!」
リナリとエマが歓声を上げる。
キッチンから、メンテが、
「お嬢さん達もコーヒー飲むかい?」
とにこやかに声をかける。
食堂にシエロがゆったり入ってくると、服を褒めあっていた女子3人に目をやった。
「おやおや、みんな今日は一際かわいいね」
シエロがそう褒め出したので、女子3人がほのかに照れ顔を見せる。
そんな朝だった。
6人で幌馬車に乗る。
「2人の国は、どんなところなの?」
クッションや座布団を山ほど入れ、そこに双子とヴァル、エマが寛いでいる。御者台はチュチュとシエロだ。
「森なんだ。中心に神殿がある。静かな森だよ」
森は、どの国にも属さない森だった。
ただ、広い森の中、トーラリス族の人間達が、代々その森を守っている。
真っ白な神殿を建て、それを中心に小さなコミュニティを築いている。
「そこまで行くのに、3日」
「3日?」
エマがきょとんとした顔で言う。そんなにかかるの?という意味ではなく、そんなにすぐ行けるの?という意味の「3日?」だ。
なにせ、学園からクレスト子爵邸までは5日もかかるのだから。
「それに、2日目はどうしてもキャンプになるんだ。山を越えないといけないんだけど、どうしてもその場所に宿がなくてね」
6人でキャンプ。
荷物が多いわけだ。学園に来る時のキャンプより、ずっと多い。
この6人で馬車に乗るのも初めて。それも、仕事じゃなくてレジャーで、なんて。
ちょっとワクワクする。
空は晴れていて、遠く入道雲が見えた。
みんなで旅行エピソード開始です!
シエロくんが微笑むだけでみんな照れちゃうんですよ。




