66 その人の事になると
エマは、自分の部屋へ駆け込んで、そのままベッドのそばに座り込むと、ベッドに顔を埋めた。
「もうやだぁ……。あんなことまで言わなくてよかったのに……」
どうしても、ジークの事になると必死になってしまう。
けど、興奮しすぎだ。あれは。
確かに、ヴァルには嘘はつかないようにしようって思ったし、正直な気持ちだけど。
大好きって何!!!???
「そりゃあもちろん、大好きなんだけどおおおおおおおおおおお」
ベッドの中に頭を埋めていく。
「絶対引いてたあああああああああ」
ああ、もう涙が止まらない……。
その日の夕食は、みんな静かだった。
エマがどう見ても泣きはらした目で夕食のハンバーグをつついていて、ヴァルはヴァルで若干強張ったような顔で黙々と食事を取っていたので、誰もお喋りすることができなかったのだ。
コソコソと耳打ちするように、「この二人、何かあったの?」「さっきまでは普通だったけど……?」と会話はあったけれど、それだけだ。
エマはその日、その後の時間を逃げるように過ごした。
できるだけ早くベッドに入ったけれど、なかなか眠ることができなかった。
朝、食堂に行かずに、ベッドの上でゴロゴロしていると、コンコン、と扉が叩かれた。
「……はい」
「アタシ!チュチュ!」
顔を覗かせると、チュチュが果物の盛り合わせと、紅茶を持って立っていた。
「朝ごはん」
と、明るい顔を見せてくれる。
「……ありがとう」
もうチュチュと結婚したい。
テーブルでそれを食べている間、チュチュはそばに座っていてくれた。
「体調が悪いわけじゃないよね?」
「うん、大丈夫」
笑ってみせる。
ここに座ってくれているのも、きっと相談したかったら聞くって事なんだろう。
「チュチュに何かあったら、相談に乗るからね」
シャク。
りんごをかじる。
ヴァルに会うのが気まずい。
とはいえ、顔を合わせないわけにもいかない。
このまま、みんなに心配をかけるわけにも。
「授業にはちゃんと出るね」
と言ったら、チュチュが髪をセットしてくれた。
ポニーテールにすることなんてほとんどなかったけれど、髪が揺れる感覚は悪くない。
今日の授業には、全員が揃っていた。
授業に出なくてもいいはずのヴァルもいたけれど、特に会話をする機会もなく、時間は過ぎた。
昼食の時間。
チュチュと双子が教室を出て行き、食堂に向かっても、エマはまだノロノロと本を閉じるところだった。
「あいつら早いな」
ふっと、横を見ると、ヴァルが席を立ったところだった。
困ったような顔で、けど優しい顔で、エマを見ていた。
なんだ、いつも通りだ。
むしろ、いつもよりちょっと優しい雰囲気。
……もう会えない人をここまでボロボロになるほど好きなんてことを……憐んでる可能性は見ないでおこう。
あんな姿を見せたのに、避けるでもなくなんでもなく、声をかけてくれた。
「今日はエビフライなんだって」
独り言のように口に出した。
「いいな」
「うん。嬉しいな」
こんな感じで、ちょっと進展?しつつ、今回は一件落着です。




