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転生少女は過去の英雄に恋をする  作者: 大天使ミコエル


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61/240

61 その手に触れるだけで(1)

 エマが大広間のある3階に降りていった時、ヴァルは階段の前にいた。

 丁度同じ時間に来た感じでもなくて。けれど、大広間の中に入るわけでもなくて。

 まるで、ここで待っていたみたいな。

 ヴァルがエマを少し面食らった顔でじっと見る。

「…………?」

「……ドレスは?」

「え?」

 と言った瞬間、さっきのドレスに思い至り、顔が熱くなる。

 確かにすでに着替えてしまっていて、いつも通りのブラウスにスカートといった格好だ。

 そんなこと誰から聞いたんだろう。

「あ……あの……ちょっと」

 まごまごと視線を動かす。

「恥ずか……しくて……」

 こっそりとヴァルの顔を見ると、「ふ〜ん?」とエマの顔を見ていた。

「俺しかいないのに?」

 と、つまらそうに言う。


 大広間の中心まで、二人、並んで歩いていく。

 ヴァルが止まったので、正面に立った。


 もう、同じ高さでは視線は合わない。

 前にダンスをした時は、同じ高さで目が合ったのに。


 ヴァルが左手を出したので、エマは右手を、前に出した。


 触れる。


 指が。


 触れて、心臓が騒ぐ。


 一歩前へ。


 ヴァルの腕に左手を置けば、ヴァルの右手が腰に触れる。


 触れた場所の一つ一つが熱を持って。


 熱くて。


 その熱さで、正気を保てなくなりそうで。


 顔を上げると、その赤い瞳と、目が合って。


 ……赤い?


 そういえばヴァルの瞳は、何色なんだっけ。

 ずっと赤だと思っていたけど、赤にしては思ったより……。


 見入るようにその顔を覗けば、エマの右手は繋いだヴァルの左手に強く引き寄せられる。


 この感覚。

 喉の奥が痛いような。息が止まりそうな、感覚。


 私はもういつの間にか、この男の子から目が離せなくなっていた。

 いつの間にか、背が高くなって。

 いつの間にか、声が低くなって。

 いつの間にか、優しい笑顔でそばに居てくれているこの男の子から。


 目を逸らすことができない。


 その存在が気になってしまってる。

 触れるだけで熱を帯びる。


 もうこの気持ちを見ないことにするなんてできない。


「…………」


 沈黙の中で、視線が合う。

 視線は合ったけれど、ヴァルも何故か言葉を発することがなかった。

 じっと目が合って。

 ヴァルの右手に引き寄せられて。


 そして、ダンスは始まった。

 ゆっくりとした三拍子に乗る。

 壁に据え付けられたランプの明かりが、くるくると視界の中で線を描く。


 どうして。


 どうして、ヴァルは何も言わないんだろう。

 ただ視線だけが合う。

 二人でステップを踏む。

 どうしてそんな、優しい目で見るんだろう。


 そんな顔で見られたら、恥ずかしくて泣いてしまいそうなのに。


 いつものように、へへ、なんて、笑って誤魔化そうとしたけれど、もうどうしても声が出なかった。

 時間まで、二人、言葉もなくただくるくると踊った。

ラブコメ度上昇中です!

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