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5 異世界転生(1)

 天井を見上げた。

 実はまだ生きていて、派手に後遺症を患い動けないのではないかとも思ったけれど、どうやら身体の大きさからすでに違うようだった。

 少し視界がぼんやりしているけれど、見たことのない部屋で横たわる自分には、真実味がある。ここにいるという実感だ。

 死後の世界というのは、こんなにもリアルなのだろうか。さすがに天に登っていったりするのはフィクションかもしれなくても、もっと違うものを想像していた。例えば、永遠の無とか。

 それとも、ここは死ぬ直前のおまけの世界?最近は転生ものが流行っているようだし、私もその流行の波に乗れたんだろうか。


 しばらく色々動いてみると、身体に慣れてきたのか、動けるようになってきた。

 他人の身体……でもなく、やはり自分の身体であるという認識なのだけど、どうしても妙な違和感がある。遠近感が掴めない。

 周りに、人がいることに気がつく。

 女性が一人……。


「あ……ぅ……」


 喋ることができない。筋肉が動かない感覚。

 声は出たけれど、やはり自分の声じゃない。

 変に高い。

 まさか本当に転生……?


 声を聞きつけたその女性が、こちらへ近づいてくる。

 そして当たり前のように抱き上げられる。


 え?


 やはり、身体はとても小さくなっているようだった。それも、これは……やっぱり赤ん坊。


 私は確かに、赤ん坊だった。


 転生なんて本当にあるの?


 でも確かに、言葉がわからない。聞き取れない。

 日本語でも英語でもない。知らない言葉。


 本当に、転生?

 ではこの女性が母親なのだろうか。それにしては、どことなくよそよそしいというか、うやうやしいというか。

 不思議な心地になりながら、その女性に抱かれ、あやされる。


 おかしな気持ちだ。


 けれど、今、この場から歩くことさえもできない。私が無力であるのは、どうにも事実のようだった。


 その日から、身体に慣れることで精一杯だった。

 慣れれば身体は起こせたし、なんとか動くようにもなれた。目も慣れてくれば、はっきり見えるようになった。

 床を這うように移動する。

 壁にかかっている大きな鏡を覗けば、もうどうしようもなく自分が赤ん坊であることに向き合わないといけなくなった。

 それも、今までとはまったく違う姿。

 日本人とはかけ離れた顔。月の色の髪。夜の色の瞳。

 これは……転生?


 ゴクリ、とノドを鳴らす。

 流行りの転生ものみたいに、乙女ゲームの世界だったりしないだろうか。

 転生だって、死ぬ前の夢だって、なんだっていい。

 ……もし……、もし、ここが、ジークがいる世界だったなら。

 悪役令嬢だって、なんだっていい。

 ジークが一目見られるなら……殺されることになったっていい。

 そこで死んじゃったっていい。


『メモアーレン』のキャラクターをじっと思い浮かべる。

 ヒロインは茶髪に茶色い瞳、だったはず。流石にヒロインではない。

 じゃあ悪役令嬢はどうだろう。

 じっと、目を閉じてどんな顔の令嬢が居たかを思い浮かべた。


 じっと鏡の中の自分を見つめた。

とうとう異世界生活に突入です!

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