42 雪が降った日
季節はとっくに冬になっているはずだった。
けれど、大木の中は暖かく、この地域は雪もあまり降らないので、これといって冬という感じはない。
けれど、その日はいつもとは違った。
昼食中ずっと、みんながソワソワしているのがわかった。
窓から、白い雪が降っているのが見える。
そう、今日は雪が降っているのだ。
音もなく雪は降る。
窓の外を眺めれば、そこは一面の銀世界だ。
全員の食事が終わり、
「雪合戦しよう!」
と真っ先に叫んだのはメンテ。
「いっくぞー!」
と叫んだのはチュチュ。
双子が手を繋いで、チュチュと一緒に走って行くのはあっという間だった。
明るい日差しの中。
食堂のクッションコーナーにはエマが学ぶべきたくさんの積まれた本。ちょっと取り残された感覚。
本の中に埋まると、
「お前は行かないの?」
声をかけられて、そちらを向く。
見ると、ヴァルがエマの近くまで寄ってきていた。
「もうちょっと、魔法陣の練習しないと」
はは、と笑ってみせる。
ヴァルが、魔法陣の練習用の小型黒板を覗く。
この世界にはタブレット、なんてものがないので、簡単に書いたり消したりするには黒板が便利なのだ。
そこには、エマが書いた魔法陣が書いてある。シエロに教わった魔法陣をなんとか真似て描けるようになってきたところだった。
「ふーん、上手いじゃん」
優しい瞳。
「いい魔法陣だな」
「いい魔法陣?」
「魔法陣は、既存の魔術でも魔術師がアレンジを加えて使うことが多いから、魔術師ごとにちょっとずつ違うんだ」
「これも?」
「ああ、これも、シエロがお前用にさらにアレンジしてある。基本的に威力よりも術の使用者の安全重視だな」
「へぇ」
と魔法陣を改めて眺めるエマを、ヴァルが眺める。
「…………」
エマが振り返ったところで、ヴァルがニッと笑った。
ぽん。
エマの頭に置かれたのは、ヴァルの手だった。
「それだけ描ければ十分だろ。雪、見に行こうぜ」
「え、あ……うん」
もごもごと返事をして、本をまとめ始めた。
離れていく手を、何とはなしに目で追った。
「さむーい」
外に出た瞬間、冷たい風に襲われた。
「うひゃー」
門のすぐ外では、チュチュが雪だるまを作ろうと雪玉を転がし始めたところだった。
「エーーーーマーーーー」
チュチュが手を振る。
双子がすかさず走って来てくれた。おさげを半分毛糸の帽子で埋めているリナリが2人分の手袋を渡してくれる。
「体作ろう!」
「私も!」
思った以上に5人ではしゃいだ。
最初は遠くでみんなを眺めていたヴァルも、双子に誘われて雪だるま作りに参加し始めた。
最後にはバケツやスコップまで持ち出すと、雪だるまは完成した。
全員でハイタッチ!
「大きいねー」
ほわほわとリナリが嬉しそうな声を出した。
カメラでもあれば、写真を撮るんだけどなぁ。
空が晴れて、雪はキラキラと光る。
精霊文字を覚えることで、既存の魔法陣をアレンジすることが可能です。パズルのようなものでステータス振り分けをするイメージです。




