41 いざ魔術教室
実習室。
今日の午後は、エマとシエロ、2人での授業だ。
今日は、シエロに魔術の使い方を教わる。
ちなみに教室では、ヴァルが双子の勉強を見ているらしい。
普段の授業でも、シエロがいない時、先生として教えるのはヴァルの役目だ。
ヴァルはもともと、魔術の腕はあるので、出たい授業しか出ていないという話だし。
授業に出なくていいほど魔術ができるなんて、思った以上にすごいのかも。
「よろしくお願いします!」
頭を45度に下げる。
エマは、黒板の近くに用意してもらった席に着いた。
まず、シエロは黒板に向かった。持っている大きな本を指し示す。
「読んでもらった本にあった通り、魔術というのは、精霊に力を借りることなんだ」
そして、シエロは黒板に図を描き始めた。
特別授業の始まりだ。
本やシエロの授業によると、魔術とは、精霊の力を借りること、らしい。
魔術師が依り代に魔力を送る。
そして、精霊の言葉を体内で紡ぐ。
すると精霊が寄ってきて、力を貸してくれる。
実際の魔術をイメージする。
それが現実に形になって現れる。
その中でも重要な“精霊の言葉”というのが、魔法陣のことらしい。
魔術が発動される時、確かに依り代の前に魔法陣が現れる。
あれが、精霊の言葉そのものになっているのだという。
頭の中で、その特定の魔法陣を思い描き、体内を巡るようにすると、依り代の魔力をインクにして魔法陣が描かれる、というのだ。
なるほど、と思いながら、その大きな本のページにでっかく描かれている魔法陣をいくつか見比べてみる。
…………一つ一つが違う魔法陣だということだけれど、見分けなんて……どうやってつけるのだろう。
よくよく見れば線や文字のようなものが違うのだけれど、線は多く、複雑すぎて間違い探しみたいだ。
前途多難にも程がある。
「魔術を使うには、使いたい魔術の魔法陣を隅々まで覚える必要がある。使える魔術の魔法陣は、何も見なくても紙に描けるものなんだ」
…………!?
書いたこともない線、書いたこともない文字を組み合わせたようなこの魔法陣を?
「精霊文字を勉強する方法もあるけど……」
と言いながら、シエロは指を口元に当て、悩む仕草をする。
金色の睫毛が、伏せられる。
「この魔法陣をそのまま覚えてもいいよ」
にっこり、と輝く天使のような笑顔がこちらを向いた。
「……精霊文字を勉強しながら、魔法陣を覚える方で」
「じゃあまずこれだね」
と言いながら、シエロは一つの魔法陣を黒板に描いていく。
サラサラと走る迷いのない線は、さすがとしか言いようがない。
これを!?やるの!?
「これが光魔術の基礎、“光”だ」
「が……がんばります」
その後、空いた時間で実技も見てもらった。
「また僕が補助するから。少し試してみようか」
「はい」
立ち上がって向かい合う。シエロが杖を構える。
「静かに想像して」
「…………」
目を閉じる。
「目の前にあるのは、小さく照らす光」
そして、シエロが高らかに言う。
「光」
それに呼応するように、エマがはっきりと唱えた。
「光」
腕輪の前で、魔法陣が輝き、弾ける。
すると、手のひらでバチッと何かがスパークして、消えた。
なんとなく手のひらを見たけれど、手にはもう何の痕跡も残っていない。
「いい調子だね」
シエロがにっこりと笑った。
魔術は独学でも習得できます。ただ、教室や学校に入った方が圧倒的に効率がいいので、先生についてもらうことのほうが一般的です。習い事としても人気が高いです。




