40 魔術の資質(2)
「じゃあ次は、光。ピカッと光る光を想像しようか。“光”と唱えて」
エマは手を突き出す。
そして、光をイメージする時、ふと、思う。
”光“?
ランプの光?
でも、光といえばそれだけじゃない。
夕焼け。あれも、光。太陽の光。
そうだ。
そして気付く。
私には、表現したい光がある。
「光」
その瞬間。
バチ……ッ。
「きゃ……あ……」
手のひらの先が眩しく光ったかと思うと、学園長が杖を振り、その光を収束させ、消した。
「…………え」
びっくりした。
呆気にとられていると、子供たちがわぁっと沸き上がった。
「エマやったぁ!」
リナリも嬉しそうに拍手をしている。
頬杖をついていたヴァルも、顔を上げ、真っすぐにエマを見た。
学園長とシエロがにっこりと笑う。
「君の得意な魔術は“光”のようだね」
シエロが、エマを祝福するように手を広げる。
「君が加護を受けているのは“空の精霊”だ」
空。
光の魔術は、空の精霊なんだ……。
そうだった。
いつだって、エマは空を見ていた。
ジークの瞳の色と同じ、夕空。
初めて見た星空。
木の上から降り注ぐ陽光。
エマの中には、光が満ちあふれている。
学園長とシエロが頷きあう。
「光といっても、ただ、眩しいだけじゃない。明日からそれを勉強していこう」
シエロは、先生の顔でそう言った。
エマの手に、畳まれたマントが手渡された。
「君のものだ」
魔術師のマント。生徒たちみんなも同じデザインのものを持っている。
魔術師の塔のものをアレンジした学園独自のデザインだ。
マントはその所属先から支給される、身分を証明するためのもの。
これで、エマもこの学園に所属する魔術師だと認められたということだ。
「はい、先生。よろしくお願いします」
こうして、エマの魔術師としての毎日が始まった。
朝教室へ行くと、エマは教室の机の一番端に座る。
そうしなければ、本が周りの邪魔になってしまうからだ。
今やエマは、大量の本に埋もれていた。
この学園では、語学や数学、地理、歴史といった集まって受ける授業は、午前中だけ。
午後はそれぞれ実技や自分の属性の勉強に勤しむ。
エマは当分、夜まで授業の補習と、光の魔術の知識を修得する必要があった。
「光の本だけでこんなに……」
「属性の特性を覚えないといけないからな。それが終わったら他の属性もあるから」
そばにいたヴァルが哀れそうに言う。
魔術の訓練ってもっと実践的なのが多いイメージだったのに。思っていたよりずっと覚えないといけないものが多い。
まともに光らせるまでに、どれだけかかるのやら。
口をへの字に曲げていると、ヴァルが少しだけ笑った。
「勉強も実技も、少しなら俺も見てやれるから」
確かに、今までのことを思い返すと、ヴァルはどうやら最後までしっかり教えてくれるタイプのようだし、魔術の腕もとてもいいようだ。
シエロが師匠になってくれたけれど、他にも弟子がいるシエロは忙しそうだし、ヴァルがいてくれれば心強い。
「おやおや?」
声がして、振り向くと、そこに居たのはシエロだった。
杖に寄りかかるように首を傾げている。
このポーズは……『メモアーレン』の最初のキャラクター紹介のときのイラストと同じポーズ!?
シエロはヴァルを見ていた。
「うちのかわいい弟子に、何をする気かな?」
「……同じ門戸なんだからいいだろ」
「正確には、君は僕の師匠の弟子で、エマは僕の弟子だ」
二人は、不敵な笑みで対峙する。
「…………」
「……ふぅ」
折れたのはシエロの方だった。
「……陣の書き方は僕が教える。他は……僕の許可を得るなら」
シエロがそう言うと、ヴァルはさらに、不敵な笑みを浮かべた。
この世界では光の魔術と呼んでいますが、実際に扱っているのは電気です。いわゆるサンダー系の魔術。なので基本的にバチバチしています。殺傷能力は一流。




