37 寮生活
「予想外!」
エマは浴槽の中で伸びをした。
雰囲気からして猫足バスタブでもあるのかと思ったけれど。予想に反して、そこにあったのは、ひとり用のお風呂にしては大きすぎる、温泉のような浴槽だった。
ちょっと頑張れば泳げそう。
一人、歌とか歌ってみる。
『メモアーレン』の中で、ジークが歌っていた歌だ。
お風呂の中に響いて、とても気分がいい。
「なんて快適」
メイドのような人はいないのに、なぜか至れり尽くせりという言葉が頭に浮かぶ。
まだ何もない部屋は、夢が広がる。
つい、思う。
たくさんある白い壁には、何枚ものポスターが貼れそう。ベッドには抱き枕を置いても、まだまだ余裕がある。
むしろ、等身大パネルを置いてもまだ余裕がありそうな部屋だ。
「すごいでしょ?」
「ほんと、すごい!」
階段を降りる途中、丸窓から見える景色を眺めた。
目の前は空。あまりにも高い場所にいて、空しか見えないのだ。
足下に見える森の木々。まるで、果てがないような景色。
食堂へ入る。
テーブルの上には、思った以上に豪華な食事の数々。サラダに、串焼き、パスタ……。カルパッチョやカナッペまで。
そして、感じる視線。
…………?
双子がじっとこちらを見ていた。
「…………」
「……ほら、リナリ」
「……ぁぅ」
肘でつつき合っている。
どうやら悪い意味の視線ではないようだ。
笑いかけると、リナリが一歩、前に出た。
「エマ、こっち」
小さな声で真ん中の席を指し示す。
「ありがとう」
……かわいい。癒し。
大きなテーブル。
片側にはチュチュとエマ。もう片側は、ヴァル、リナリ、メンテ。
お誕生日席にシエロが座る。
「そうそう、明日からの、料理と馬の世話決めなくちゃいけないんだ」
チュチュがジャガイモを頬張りながら言う。
「う〜ん、エマはお料理は得意?」
「あ、ううん。教えてくれればできると思うけど」
実は、転生してからは料理したことがないんだよね。
転生前なら一人暮らしだったし人並み……ううん、自分が食べるくらいはできてはいたけど。
「そっかぁ、じゃあ〜……覚えるまではアタシと組もうか!」
チュチュはどうやら面倒見がいいようだ。
この学校で生活面を仕切っているのはチュチュらしい。
「ありがとう!助かるよ」
「じゃあ、当面、そっちのチームとこっちのチームね」
チュチュがテーブルの向こうとこっちを示しながら言う。
「ああ」
ヴァルが双子を見遣りながら返事をした。
シエロが、エマの方を向く。
「何か困ったことがあれば、僕になんでも聞くといい」
シエロの笑顔は、本当に天使みたいだ。
こうして、エマの新生活が始まった。
みんな優しくて、緊張することもない。
快適な部屋と、快適なお風呂。
「魔術師に、なるぞ〜」
エマはひとり、ベッドの上でこぶしを突き上げた。
個室は、木の内部なので、壁は丸くなっています。窓もあり、明るいお部屋です。お風呂とトイレも個室に付いています。備え付けのベッドや机、本棚などのデザインがかわいいのがポイント。




