36 グラウ魔術学園(2)
4階から先は、周りの廊下から木の中心へ向かっていくつか廊下が伸びており、ワンフロアはいくつかの部屋に分かれていた。
「4階はサロン。お客様が来た時にはここに通すんだ」
シエロは一つの部屋を見せてくれた。
中は、重厚なアンティークな雰囲気が漂う。触ってもいいのか迷うほどの高級そうな装飾。暖炉、ソファ、ローテーブル。
5階も部屋が分かれているのは同じだけれど、腰から上はガラス窓がはまっていて、どこの部屋も覗けるようになっている。
小さな実習室のような部屋や、研究室のような部屋が続く。
「ここがアタシたちの教室だよ」
と、チュチュが案内してくれた。
木の緩やかなカーブを利用し、生徒用の白木の机が教室を緩く囲むように置かれている。その正面に大きな黒板と教卓。
生徒用の机は10人程度が座れる長い机になっている。
ファンタジー調の……ある意味妖精の部屋のような内装で、生徒数が少ないだけあって、どことなく幼稚園のようなファンシーさを感じる部屋だ。
6階には、大きな食堂と、よく手入れされたキッチン。
食堂は、10人ほどが座れる大きなテーブルがある。
その脇は、クッションや背の低いソファがあるコーナー。普段生徒がくつろいでいるのはここらしいと想像がついた。
「3人は疲れてるだろうから、今日の夕飯はぼくらが担当するよ」
メンテが照れながらも申し出てくれる。
「お前ら、まだ包丁持てないだろ?」
ヴァルが聞いたけれど、
「午前中、町に行ってきたんだ。あとはサラダだけ」
とのことだった。
そこで双子と分かれ、7階へ。
7階は、大きな扉がひとつだけあるフロアだった。
シエロが両手を広げ、大げさに扉を開く。
そこは、図書室だった。
シエロが足を踏みこんだけれど、床が音を立てることはなかった。
「わぁ……」
こんな数の本は見たことがない。
それも、半分は魔術に関する本らしかった。
本棚やソファは落ち着いたアンティーク調で、ここで本を読む人への配慮を感じる。
本棚はどれも3メートルはあるような大きな本棚で、本棚にはどれも梯子が据え付けられている。
「魔術師としては、なかなかの数を揃えていると思うよ。王都には敵わないけれどね」
シエロがにこりとする。
シエロの笑顔は、いつも少しどきっとしてしまう。それほどに綺麗な顔をしている。
8階は、男性用個室。
9階が女性用個室だった。
「ここだよ」
チュチュが先導して案内してくれる。
扉をガチャ、と開けると、白を基調とした清潔そうな部屋が見えた。
寮の自室にしては暖かな空気の中に、まるで妖精が作ったんじゃないかと思えるような、花や蔦がデザインされたベッドや机などが置いてある。
「かわいい……」
「でしょでしょ。あっちの扉がお風呂ね」
「ありがとう」
「お掃除と洗濯は木がやってくれるから」
「木?」
「そう。この木に宿る精霊の子供?みたいなのがね、学園長のお友達なんだって。汚れたものは見てない間に綺麗にしてくれるんだよ」
「へぇ……」
見たこともないほど大きな木。家のようになっているからもしかしたら作り物の木なのかと思っていたけど……。
生きている木、かぁ。
部屋に入ると、シエロとチュチュが部屋へ戻っていった。
「荷物ここでいいか?」
ヴァルが部屋の真ん中で、どさっとエマの荷物を置く。
「ありがとう」
「いいよ」
「これから、よろしくね」
エマがそう言うと、ヴァルが優しく笑う。
「ああ、よろしくな」
扉を出て行くヴァルに、ひらひらと手を振った。
エマはひとりになると、お風呂への扉をくぐってみることにした。
メンテとリナリ。双子で、共に7歳。留学生。




