35 グラウ魔術学園(1)
大きな扉のような門を潜ると、そこは確かに木の中だった。
木をそのままくり抜いたと思われる、ゆるやかなカーブを描く木の壁。磨いたようにツヤツヤとしている。
木の中であるにも関わらず、壁には蔦が走る。
中は思った以上に広く、天井は高い。
1階は庭のようになっており、ベンチに囲まれた中心には、大きな階段が折り返しながら天井へと続いている。足下は地面のようで、一面草花で埋まっている。階段の裏手にヴァルが馬車を連れていくところを見ると、あちらが厩舎なのだろう。
窓は小さいけれど、沢山あり、この広い空間だというのに暗くはない。むしろ、昼間の外であるかのように明るかった。
「きれい……」
エマが呟くと、シエロが満足そうににっこりと笑った。
階段前には、チュチュと先ほど門から出てきた2人が居た。
2人はやはりチュチュよりどこか幼い。男の子と女の子という違いはあるものの、背の高さも同じで、とてもよく似ていた。どうやら双子のようだった。
「はじめまして。ぼくはメンテ」
男の子の方が、エマに向かって恥ずかしそうにそう言った。
「はじめまして。あたしはリナリです」
女の子も、それに倣って、挨拶をする。
エマは、にっこりとした。
「エマです。よろしくね」
「この学園は小さくてね。学園長である大魔術師様をいれて、これで全員なんだ」
シエロが説明してくれる。
そう、この学園は、このメンバーで全員だった。
学園長である大魔術師マルー、教師をしているシエロ。双子のメンテとリナリ。そして、チュチュにヴァル。エマを入れれば7人だ。
学園長は多忙で、あまり学園にはいない。
「大魔術師様のことは“学園長”と。僕のことは、よければ“先生”って呼んでくれるかな」
そう言いながら、シエロが首をかしげる。
その仕草が『メモアーレン』そのものすぎて……心臓がドキドキしてしまう。
「はい……、先生」
「2階は玄関ホール。3階は大広間。4階はサロン。5階が教室。6階が食堂。7階が図書室。8階から上が個人の部屋になっている。だいたい食堂に集まることが多いかな」
それからは、みんなでぞろぞろ、学園を案内してくれた。いつの間にか、馬をかえしに行ったはずのヴァルまですぐそばに居た。馬車にあったエマの荷物を、すでに持ってくれている。
「ありがとう」
受け取ろうとすると、
「いいよ。部屋ちょっと遠いから」
と言って渡してはくれなかったので、そのままお願いした。
2階に上がると、また圧巻だった。
階段を上がればすぐに玄関ホールで、広い空間に出た。上がってきた階段は、ちょうど木の中心のようで、エマがいる場所を取り囲むようにアンティークな家具で飾られている。
ファンタジー風と言ったらいいのか、カントリー風と言ったらいいのか。暖かな雰囲気に包まれた空間だ。
階段の正面には、壁沿いに左右に向けて、上への階段が据えられている。ここから上の階段は、壁沿いにつけられているらしい。
その階段を上がると、3階。広い廊下になっている。少し先にまた上へ続く階段が伸びている。
外側にも内側にも大きな窓がついていて、天井は高い。内側の窓の向こうは、王宮のような柱が立つ、ダンスホールのようだった。
丸くくりぬかれた天井は、金や銀のキラキラとした装飾で飾られている。
「この大広間は優秀でね。中がお洒落でしょう?」
シエロが大きな扉を音もなく開け、中を指し示す。
……おお、シエロくんのドヤ顔……。
「ダンスパーティーをする時やお客様と会食をする時はもちろん、魔術の訓練などもここでできるよ。とても頑丈なんだ」
すぐそばで興味深そうにしていた手を繋いだ双子の1人に、声をかけてみる。
「リナリもここで魔術の練習をするの?」
すると、こくこくと頷いて、メンテの後ろに引っ込んでしまった。
とうとう学園に入ることができました!
物語の中心になる場所です。とにかくかわいい学校です。




