34 天使のようなその人は
嘘。
でも。
私が、見間違えるはずない。
輝く長めの金髪がサラサラと揺れる。整った耳が見え隠れする。空のような青い瞳が瞬く。
天使のような笑顔。
背よりも高い、大きな紅の宝玉がついた杖。
白を基調とした魔術師のマント。
間違えるわけない。
コスプレとか、VRとか、そんなレベルじゃない。
本物が、そこに居た。
それは、『メモアーレン』の攻略対象の一人。
甘えるような天使の笑顔。
12歳のショタ枠。
シエロ・ロサ。
その人だった。
もうすっかり大人の姿だけどわかる。
目の前に、その人が立つ。
映画を見るようにぼんやり眺めていると、その人がエマに話しかけてきた。
「はじめまして。僕はシエロ・ロサ。ここで、教師をしているんだ」
まるで私に話しかけてるみたい……。
これが本物……。
なんて綺麗な人なの……。
泣きそうだ。
にっこりした笑顔のシエロ。
本当にちょっとウルウルする瞳で、シエロを見上げるエマ。
そして、それを無言でじっと見ているヴァル。
エマは一頻りその顔を眺めてから、ハッとする。
そうだよ、話しかけてるんだよ……!
「エマ・クレストです!今日からよろしくお願いします!」
ぺこり、とお辞儀をする。
本当に『メモアーレン』の攻略対象と会えるなんて!!!!!
ランドルフ王の時は、馬車のあっち側で見えなかった。
ああ、なんて眩しい顔をしているんだろう。
すっかり大人の姿。
あれから10年なら22歳だ。
22歳で……この変わらないショタ感……。
22歳の……ショタ……???
そっか〜〜〜〜〜。22歳のショタかぁ〜〜〜〜〜。
ショタの好みはないし、推しでもなんでもないけれど。
そもそもエマの好みど真ん中のジークはヒロインよりも年上の20歳だ。
それでも、シエロは戦闘力が高いので、戦闘する時のパーティには入れていた。
得意魔術は水。
もともとセラストリア王国は泉の精霊が始祖であると言われている。魔術国家で、外国から魔術関連で住み着く人が多いので、基本的には多民族だが、それでも実際、水を得意としている人が多いのだ。
王族にも水を得意としている人が多いようで、王族と血縁であるシエロくんも得意なのは水の魔術。
特にシエロくんの得意魔術は、広範囲に水を張り、それを凍らせて氷の刃で敵を貫く魔術。
それを思い出したところで、エマはシエロの顔をさらにまじまじと見た。
実際にそんな魔術を使うと思ったら……エグいな…………。
そして、ジークの弟弟子。ジークをよく知っている人……。
「じゃあ、学園を案内するね」
そう言われて、エマはシエロの後ろをひょこひょこと付いていった。
ああ、ニヤけるような笑みが隠せない。
目の前の白いマントが揺れる。
そして、その2人の後ろから、馬車を引き連れヴァルが付いていった。
シエロ・ロサ。22歳。大魔術師マルーの3人目の弟子。ランドルフ、ジークを兄弟子に持つ。




