32 キャンプ(2)
馬は、魔術の闇に慣れるよう訓練されているらしい。
馬車の周りを片付けると、3人は馬車へ入る。
「横向き?」
「アタシ、エマのお隣!」
「座って寝るか?」
言いながら、3人で寝る方法を探す。
どうやら3人で馬車で寝ることは想定していなかったようだ。キャンプだって大抵は誰かが見張り役になるものなのだから。
馬車に対して横向きに眠るほどの幅はない。
かといって、3人が縦向きに余裕を持って眠れるほどの幅もなかった。
チュチュが座って寝る体勢を模索して木箱の間へ潜り込んだけれど、後ろへごろんと転がって、アワアワともがくことになった。
「エ~~~~マ~~~~」
差し出された手を握る。
「よーいしょ!」
強く引っ張ると、今度はチュチュがエマの方へ倒れ込み、二人でごろんと転がった。
「普通に寝よう!」
とうとう諦めたチュチュが、毛布を抱えて縦向きに転がった。
「ほら、エマも!」
引っ張ってきたもう1枚の毛布をエマに渡す。
「でも、ヴァルが……」
言いかけたところで、チュチュがエマの腕を引っ張り、二人で寝転がる。
「…………」
その姿をジト目で眺めたヴァルは、
「……外で寝るわ」
と、踵を返す。その足を掴んだのはエマだった。
「そんなわけにいかないよ。ここで寝よう?」
ヴァルがつんのめり、堪えた体勢で振り返る。
「それこそ……」
反論しようとしたヴァルだったけれど、エマの真剣な瞳とチュチュのキラキラした瞳に気圧される。
結局、エマを真ん中にして、3人はそれぞれ毛布を被り、横になった。
チュチュが、エマの手を取る。
「ふっふーん」
はしゃぐチュチュだけれど、包んでくれる手は優しい。
チュチュとエマは、結局今でも毎日2人部屋で寝ていた。夜になると泣いてしまっていること、もう声はかけてこないけれど気づいているのかもしれない。
目の前は、夜で、馬車の幌の中。幌は全て下ろしてしまっているから、ランプを消すと、うっすらと姿が見えるか見えないか程度だ。
真上をじっと見る。
暗い。
チュチュの手を、握り返す。
うん、手があったかい。
ふいに、チュチュが、エマの逆の手を示した。
「ほらほら、ヴァルもそっち」
え?
「なんで俺が」
「チュチュ」
止めようとしたけれど、ヴァルはエマの声音で何かを察したらしかった。
ヴァルは眉を寄せると、エマの方を向き、手を握る。
「深淵の王」
驚く間もなく、ヴァルがもう片方の手で持っていた短剣で、魔法陣が光り、弾けた。
3人の目の前は、もう何も見えない闇だった。
暗闇の中。けれどその手は温かく、寂しく想う気持ちごと闇は全てを包んでくれた。
さて、次回は学園に到着します。
新展開!




