29 ショッピングデイ(2)
しとしとと降る雨の中、二人、町の中を歩いた。
それぞれ、片手にランタン用の燃料を持っている。持ち運べるように取っ手がついている大きなボトルのようなものだ。
それほど強くないけれど、歩くのが億劫になる程度の雨。
言葉もなく、並んで歩く。
大きなホールのような場所に、開いた大きな扉のようなものがあったので、エマはふいっとそちらの方を見た。
ちょっとした興味だ。
「…………」
中は、市場のようになっているらしい。屋根付きのホールの中、小さな屋台が並んでいる。
「……寄ってくか?」
「え?」
振り返ると、ヴァルがこちらを見ていた。
「簡単な食事ができる場所なんだ。ベンチに座って食べられるようになってて」
「へぇ、面白そう」
笑顔を見せると、ヴァルがホールの方へ向かう。
着いていくと、中は、円形ホールで、ちょっとしたお祭りのようだった。
ラーメンのような小さな器に入った麺もあれば、串焼きのようなものもある。そういった軽食の店がたくさん並んでいた。
中央には買ったものが食べられるように、ベンチが円形に並んでいた。
2人して、興味津々で店を見て歩く。
「チュチュにお土産にできるものがいいなぁ」
「俺、肉」
「あ、じゃああの串焼きは?」
エマが指差したのは、バーベキューで見るような大きな肉の塊が刺さった串焼きだった。
「いいな」
言うが早いか、ヴァルはもうその店でお金を出していた。
エマも慌てて、それに付いていく。
財布を出そうとして、あ、と思う。
私、転生してから自分でお金を出して買い物するの初めてだ。
お金についてはマリアに教わっていたけれど、実際に財布を出して買ったことはない。
ちょっと緊張しつつ、銅貨を2枚出す。
この国のお金は単純だ。金貨、銀貨、銅貨の3種類があるのみ。
大きな串焼きを受け取った瞬間は、ちょっと誇らしい気持ちでいっぱいだった。
「フッ」
横で吹き出す声が聞こえたので、ヴァルの顔を見た。
笑ってる……。
ヴァルは、串焼きを頬張りながら笑いをかみ殺していた。
「すっげ嬉しそうな顔」
「これね、私の初めての買い物」
エマのドヤ顔に、ヴァルがクックッと抑えたような笑い声を上げた。
「よかったな」
「へへっ」
翌日はよく晴れた日だった。
道はぬかるんでいたけれど、馬の機嫌はいいみたいだった。
「森は広い。早足で駆けてやっと抜けられるくらいだ。急ぐぞ」
ヴァルが手綱を握る。
森は遙か先まで続き、木が生い茂って、晴れているというのにどことなく暗い。
これが……シュバルツを取り囲む森……。
ヴァルが手綱を弾くと、馬が地を蹴る。
馬車は、森の奥へと進む。
2人でお散歩!だんだんと仲良くなってきましたね。




