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転生少女は過去の英雄に恋をする  作者: 大天使ミコエル


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28/240

28 ショッピングデイ(1)

 翌朝は早かった。


 ヴァルに教わりながら、馬の世話をした。

「今日もよろしくね」

 ブラッシングをしながら、馬に挨拶をする。

 そんなエマの後ろ姿を見て、ヴァルはふっと笑う。


 旅は順調だった。

 順番に馬の手綱を握り、草原で3人揃って食事をした。

 ヴァルと二人でいる時はあまり話さないけれど、そんな静かな時間も悪くない。

 紅葉した林を眺めながら風を受ける。

 夜は、やっぱり泣きながら眠ることが多かったけれど、楽しい毎日だった。


 4日目の朝。

 目が覚めると、雨が窓を叩いていることに気づいた。

「ありゃあ、今日は森を抜ける日なのに」

 窓の外を眺めながら、チュチュが不安そうな声を出す。

 シュバルツは周りを深い森が取り囲んでいる。どうあっても、森を抜けるしかシュバルツにたどり着く方法はない。


「お〜ふる?」

「何だって?」

 朝食中、パンを口に突っ込んだまま喋るチュチュに、ヴァルが聞き返す。

 くるりんとした目をヴァルに向けたまま、チュチュはのんびりと口をモグモグさせてパンを食べ続けた。

 ごくん。

 そんなやりとりを見ながら、エマはマグカップの中のコーンスープをすする。

「今日は雨みたい。どうする?」

 口を空っぽにしたチュチュが、また、聞き直した。

 ふぅ、とちょっとヴァルが考える仕草をする。

「この3人だと、暗い森を抜けるのは危険だからな。馬も休ませたい。今日はこの町でもう1泊しよう」

「りょ〜かい」「了解」


「この3人だと危険」という言葉を、エマは、まだ3人が子供だからという意味に受け取った。けれど、どうやら違うらしい。

 あとでこっそりチュチュに聞いたところによると、暗い森を抜ける時には、炎や光の魔術の使い手が不可欠なのだという。エマはまだ魔術が使えないし、チュチュとヴァルもどうやらそちらの魔術は不得手らしい。

「そうなんだ」

 ジークなら、炎の魔術が得意だったのに。

 ヴァルのことを、少しだけジークに似ていると思った。けど、どうやらヴァルは炎の魔術は使わないらしい。

 ……やっぱり、全然別人だ。


 その日は1日、森を抜けるための装備を揃える日になった。

 チュチュは一人、食料の調達に行くことにした。エマとヴァルは暗い場所を通るための装備を揃える役目だ。

「ランタンの燃料、多めに買っていくか。もしかしたらキャンプになるかもしれないから」

 馬車の中、木箱を眺めながらヴァルが言う。

 雨がぱたぱたと馬車の幌に当たる音がする。

 一通り見終わると、二人、マントのフードを頭からかぶった。ヴァルのマントは学園のマークが入った魔術師特有のもの。エマのマントは魔術師用のものではなく、雨よけ用のマントだ。

 ヴァルが馬車から降りると、パシャン、と水たまりで水が跳ねた。

「ん」

 ヴァルが、当たり前のようにエマの方へ手を出す。

 ん?

「…………」

 自分の手を、ヴァルの手の上へ乗せた。手を貸してもらい馬車の外へ。

 やはり、パシャン、と水たまりの水が跳ねる。

 ふいっと手が離れていく。

 ……ちょっと照れるじゃん。

ヴァル。10歳。今のところ背は平均よりも低めです。

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