25 外の世界へ
初めて見る外の世界は、とてもキラキラしていた。
狼や盗賊がいるというから怖い山道ばかりなのかと思ったけれど、次の町へ行くまでは、長閑な草原の景色が広がっていた。
御者台にはチュチュ。エマの目の前にはヴァルが座る。外を眺めるヴァルの顔は、こっそり見るだけでもなかなか好みの顔だ。
とはいえ、こうなると話すこともなくて手持ち無沙汰。
こんな時にスマホがあれば、ゲームをするなりジークのスチルを表示させるなりで時間を有意義に使えるんだけど。
ふと思い出す。
『メモアーレン』はインディーズのゲームだったから、フィギュアみたいなグッズはなかった。あくまで同人で作れるレベルのグッズばかりだ。
それでも自作フィギュアや自作ぬいぐるみを作っている人はいて。その中でも攻略対象の一人であるシエロくんのぬいぐるみを作って一緒に旅をしている人のSNSをエマはよく見ていた。
シエロくんは12歳。いわゆるショタ枠。金髪キラキラおめめの天使のような少年。
自作ぬいぐるみの人は、そんなキラキラ天使の瞳をうまく再現していた。
そういえば、そういうことはしたことがなかったな。
ジークの自作のぬいぐるみ……作れるだろうか。
そんなことを思いながら、外の風に当たる。
「そうだ。うちのメイドが、クッキーを持たせてくれたんだ」
クッキーの包みを出し、広げながら声をかける。
「ヴァルは、クッキー好き?」
それまで外を向いていたヴァルが、エマの方を向いた。
あ、目が、合った。
「ああ、もらうよ」
クッキーに目を落とすヴァルは、少しだけ嬉しそうだ。
甘いものは好きみたい。
心がふわふわする、そんな空気。
「いいにおーい!アタシにも残しておいて!」
「もちろんだよ」
「チュチュに出すと全部食べられるぞ」
「そんなに大食いじゃないよ!?」
モシャモシャと食べるクッキーは、いつになく幸せな味がした。
それからしばらくして。
「さあ!エマが馬当番だよ!」
チュチュが急に立ち上がった。
「うん!え、でも大丈夫かな」
子爵邸にも馬はいたので、馬と戯れることはあったけど、実際に手綱を握ったことはない。
「だーいじょうぶ!ヴァルがやっさしく教えるから」
「おい、なんで俺だよ」
ヴァルが呆れた声を出す。
「クッキーたくさん食べたでしょ」
「…………」
確かに、一番クッキーを食べたのはヴァルだった。
「ほら!二人とも、こっち来て」
揺れる馬車の中、よろよろと前へ移動する。
「……大丈夫か?」
なんとか御者台までたどり着くと、突然手綱を渡される。
「えっ」
「持ってみて。このまま歩いてくれてるからね」
ヴァルと二人、御者台に座る形になった。
後ろでは、早速チュチュが座布団をかき集めてごろごろしながら余ったクッキーを貪っている。
目の前はどこまでも草原で、青い空が広がる。
二人で座るなんて、なんかちょっと照れるじゃん。
チュチュ。8歳。背が低いので幼く見られがちです。基本的にしっかり者。家族とは仲が良く、パパっ子です。




