197 計画
みんなが集められたのは、大広間だった。
前に立つシエロが真剣な面持ちだったので、何の話か見当がついた。
シエロの持つ杖が少しだけ揺らいで、赤い宝玉が光を反射した。
「翼竜対策について、決まったことがあるから、みんな聞いてほしい」
大広間は、6人が揃っているというのに、静まり返っていた。
「ヴァル、エマ、そして僕の3人は、王都での対策チームに入ろうと思う」
「へ……?」
声を上げたのはチュチュだった。
「アタシたちは……!?」
「チュチュ、メンテ、リナリの3人は、この町を守ってもらう。町の騎士団は周囲の村に分散する予定だから、この町を守るのは、君たち3人だけになる」
「…………っ」
チュチュと双子が息を呑む。
「3人で……」
呟いたのはメンテだ。
「僕たち3人は、1週間後、王都に向かうことになる。いない間は責任者はチュチュになってしまうけど……。任せていいかな」
シエロが優しい顔で眉を寄せ、首をかしげた。
「はい……」
チュチュが泣きそうな顔で、けれどしっかりした声で、そう返事をする。
それから、どんな状況になってもいいように、全員で戦略を話し合った。
「もし、翼竜が到着する前に情報が得られるなら、町の人たちは学園に避難させて欲しい。ここならメンテとリナリも町の人を守りやすい」
「学園ひとつなら、魔術で覆えます」
メンテの言葉に、リナリも頷く。
「チュチュは、町の人全員を把握しているから、避難に力を入れて」
「はい」
「僕らは王都の追跡チームに入る。翼竜が出現した方向に、向かっていく。……前回、ヴァルと、それにキリアンも入っていたチームだ」
「…………」
全員が沈黙した。
思い出さないわけにはいかない。
翼竜と対峙し、犠牲と共に翼竜を撃退させたあのチームだ。
ヴァルは……王太子達と山岳地帯に向かい、そこで殺された。
今度は、私が絶対殺させない。
エマは、決意の瞳を見せた。
「1週間後、僕らはまず城へ向かい、王と王妃も含めたチームの会議に出席する」
「王と王妃…………?」
というと、ランドルフとアステールということ?
『メモアーレン』の主人公と攻略対象に会える?
私には王子ルートをやり込んだ記憶がある。
そりゃあ、もちろん、思い入れがないと言ったら嘘になる。
PVのジーク目的でゲームを始めた私は、初めからずっとジーク推しだ。
何があってもジークが一番であることに変わりはないけど。
それでも、推しでなくとも、ランドルフとアステールは特別な存在ではある。
「キリアンも一緒だよ」
「パパも?」
チュチュの顔が、一層不安になる。
エマが、チュチュの手を取った。
「大丈夫だよ。みんな居る」
チュチュの顔が、少しだけ柔らかくなる。
「……うん」
頑張ろう。
みんなの為に。
自分の為に。
そして絶対また、ここに帰ってくるんだ。
ラスボス戦に向かいますが、まだもうちょっとラブコメ展開です。