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188 気合い十分

 木の後ろに隠れたまま、チュチュは小さな声で呪文を唱える。


「ジュエル」


 チュチュのベルトに付いた黒い石の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 チュチュの左手に、黒い短剣が握られる。


 少し覗き、そこに誰もいない事に気がつくと、周りを見渡す。

「え……?」


 おろおろしていると、後ろから声をかけられる。

「こっちだよ」

「…………!」


 短剣を振り上げ、迫ってきた杖に応戦する。

 チュチュの短剣が弾き飛ばされた瞬間、


「ジュエル」


 また呪文を唱え、手に短剣を握った。

 シエロが余裕ぶった笑みを浮かべる。

「甘いね」

「くっ……」

 なんとか、杖を柄で押し返したものの、シエロが杖にかけた力を抜いたので、チュチュはそのままバランスを崩した。

 なんとか、耐える。

「まだまだ!」

 後ろへ飛びすさり、立ち上がると、また呪文を唱えた。


「ジュエル・リング」


 チュチュのベルトに付いた黒い石の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 チュチュの頭上に、輪っか状に、黒色のナイフが現れた。

 輪は斜めになっており、順々に2本ずつナイフが落ちてくる。

 そのナイフを両手で取り、取った瞬間に投げることを繰り返した。


「たああああああああああ!」


 シエロはその全てを避けたけれど、顔は満足そうだった。

「新魔法陣、なかなかいい感じだね」


 今日の実習は、チュチュ一人、シエロとサシで戦う実戦訓練だ。


「そうなの!!」

 チュチュの目がキラキラする。

「落ちてくるタイミングはもうちょっと調節しなきゃだけど、ピッタリ合うようになったら気持ちいいと思うんだ!」

「正直、ここまで実用的なものができると思わなかったよ」

「あはは。“ジュエル”は先生にもパパにもかなり頑張ってもらったもんね」


 魔法陣には意味がある。

 精霊の言葉に則り、描く事ができれば、オリジナルの魔法陣を作ることも可能だ。

 チュチュが扱う魔術、“ジュエル”は、チュチュのオリジナル魔術だ。

 とはいえ、当時8歳のチュチュに魔法陣が描けるわけもなく、実際の作業はほぼシエロが形にしたものだ。

 チュチュも話し合いに参加はしていたけれど、ほとんどキリアンに相談した事をそのまま伝える橋渡しのようなことをするので精一杯だった。


「今回は、アタシもけっこう勉強したんだ」

「本を読むのが苦手なのに、よく頑張ったよ。最近、気合い十分だね」

 シエロがにこっと笑ったので、チュチュもニッと笑う。


 頑張りたくなったんだ。


 パパの娘として。

 先生の弟子として。


 今頑張らなかったら、一体いつ頑張るんだ。

ハッピーエンドへ向けて、みんな頑張っております!

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