表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/240

186 シエロくん(1)

 ヴァルの足元に木箱が二つ。

「では、確かに」

 荷馬車に乗っていた宅配のお兄さんが、挨拶をした。

「どーも」

 一言返し、木箱を眺める。

 学園への荷物には滅多にない大きな箱。人間の一人くらい入りそうだ。

 タグを見ると、絵師のエリオットからエマ宛の荷物だった。

「あの人から……」

 以前、エマがもらったあのゲームの大量のグッズの事を思いだす。また、ああいったものなのだろう。


 仕方なく、エマの部屋まで運んでやる。

 さっき訓練から帰ってきたようだから、今頃はまだ部屋にいるだろう。


 コンコン。


 エマの部屋の扉を叩く。

「はーい」

 エマの声がして扉が開いた。

 ひょこっと、エマが顔を出す。

「ヴァル!」

 俺だとわかると、ふわっとした笑顔になる。

「荷物」

「荷物?」

 床に置いた木箱に目をやると、エマがびっくりした顔になった。

「すごく大きいね?」

「エリオットさんからだと」

「あ〜〜〜〜……」

 荷物が来る予定でもあったんだろうか。


「でかいから、中に入れるぞ」

「うん、ありがとう」

 扉をギリギリでくぐり、部屋の真ん中に荷物をどん、と置いた。

「見た目ほどは重くないんだ」

 言いながら、ふと、部屋の中が目に入る。


「…………」


 以前入った時は、“ジーク”のグッズが所々にあったようだけれど、今回は全くない。


 あったらあったで、俺よりもそっちの“ジーク”の方がいいんだろうかと複雑な気分になるけれど、なかったらないで、好きではなくなったんじゃないかと不安になる。

「もう一つあるから、持ってくるよ」

「一緒に行くよ」

 ということで、二人で階段を上り下りすることになった。


 エマが、ニコニコと隣を歩く。

 ……それほど、欲しかったものなのだろうか。


「中、あのゲームの?」

 我慢しきれずに聞いてしまう。

「あ」

 エマが、一瞬、言葉に詰まる。

 言ってもいいのかどうか少し考える仕草をしたところで、

「うん。そうなんだ」

 と、返事が返ってきた。


「エリオットさんにお願いしてたんだ。こんなに早く届くと思わなかったけど」

「よっぽど好きなんだな」

 軽く笑う。

「うん……まぁ。あのゲーム、けっこう戦闘もちゃんとしてて、前衛と後衛に分けて、敵と戦うんだけど、意外と頭使うんだ。そういう作り込みも細かくて楽しいの。私、いつも前衛がジークと王太子で、後衛を主人公のアステールとシエロくんにしてたんだけど……」


「…………え?」


 シエロ…………“くん”????


 今まで、エマが誰かのことを君付けで呼ぶのを聞いたことがなかった。


 ジークに向かって時々様付けしているのを聞いたことはあるけれど。ヴァルである今は、最初から呼び捨てだった。

 年下のメンテだって、最初から呼び捨てだ。


 ……一体どうしてあいつだけ君付けなんだよ……。


 2つめの荷物を持つと、エマが他愛ない話をするのを聞きながら、また階段を上がる。

 エマに扉を開けてもらい、部屋になんとか木箱を入れる。


 どうして…………俺の絵を飾らなくなった?


 その時だった。

 多少手荒く扱ったからか、持っている木箱の蓋がバカッと開いてしまう。

 ドン、と音がして、木箱の底が床についた。

「わっ」

「あっ、ごめ……」

 言いかけたところで、中身に目が行った。

「…………」


 大量のグッズ。

 そのどれもが、同じキャラクターが描かれていた。

 肩まで届きそうな長めの髪。

 空のような青い瞳。

 自分よりも大きな赤い宝玉のついた杖。

 憎らしい生意気な笑顔。


 それは、間違いなく、シエロだった。

こんな展開ですが、ヴァルから見たらあまりにも複雑な心境でしょうね……。

ラブ度はゆっくりとどんどん上がるよ〜!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ