表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/240

17 お土産

 エマは、部屋に置かれた大量の品物と対峙していた。

「どれでも好きなものを好きなだけ持っていくといいよ」

 全て、父が持って帰ってきたお土産だ。ドレスや宝飾品はもちろん、見たこともない部屋飾りや食料品まで……そのどれもが、エピソード付き。さすが、5年もかかっただけはある。

「う〜〜〜ん、これは?」

「北の方の山岳地帯に、山羊を飼っている民族がいてね。戦闘民族なんだけれど、山岳への登り方がすごいんだ。その山羊のミルクでできたチーズをもらうために、私も崖登りにチャレンジしたよ」

 まだ、緊張はするけれど、それなりに会話ができるようになってきた。

 帰ってきたときとは打って変わって、動きやすそうな商人衣装に身を包んだ父と、なんでも興味津々の母と、明るいサロンのふわふわ絨毯を足の下に感じながら、品物を見てまわる。

 父親の声はなかなかの癒し系だ。もしやこの声で商売が成り立ってるんだろうか。

 一つ一つ覗いているエマの横で、「これはエマのために手に入れたものなんだ」と父がマリアに品物を渡す。これもこれもと渡していくので、すでにマリアの両手はいっぱいだ。


「これは、シュバルツという土地の……」

 父が言いかけたところで、エマはがばっと振り向いた。


 シュバルツ……。

 まさか……。


 ジークの名前……「ジークヴァルト・シュバルツ」を思い出す。


「シュバルツ……伯爵……」


 呟いたところで、父の顔がパッと輝いた。

「よく知っているね。ここより北西に位置するシュバルツの地は、シュバルツ伯爵が治めている。ここより少し寒いんだけど、綺麗な山や森が多くてね」

 エマの手に、ころんと宝石が乗せられる。窓から入る光に照らされた、金色の水晶のような石。

 エマの瞳が宝石のように輝くのを見て、父は満足そうに微笑んだ。

「これは、シュバルツで取れた石なんだ。シュバルツは清らかなものが多いから、この宝石もいい魔力の依り代になるよ」

「魔力の、依り代?」

 言いながら顔を上げると、父親と目が合った。

 まだ父親という実感はなく、ちょっと照れる。

「そう、魔術を使うときには精霊の力を借りるんだけれど。精霊は綺麗なものが大好きだからね。その綺麗なものに魔力を込めることで、精霊が気付いて力を貸してくれるんだ」

 ふと、ジークの短剣を思い出す。

 ああ、杖とか短剣のことか。

 この国の魔術師は大抵杖を持っているけど、実は精霊の好むものならなんでもよかったのね。

「これも……もらっていいの?」

「もちろんだよ」

「あ、ありがとう、お父様」

 エマはとても、嬉しそうに笑った。

「私……魔術師になれるかな?」

 そう言うと、父と母がにっこりと顔を見合わせた。

「きっと、いい魔術師になれるよ」


 もらった宝石は、街の職人さんを紹介してもらい、身に付けやすい腕輪に加工してもらった。

 これで、魔力を込める練習をすることで、その人の魔力に馴染んで、その人だけの魔力の依り代となるらしい。

 いつか、翼竜も倒してしまうような、そんな魔術師になろう。

 日の光に腕輪をかざすと、宝石はエマの気持ちに応えるようにきらりと光った。

エマちゃんが魔術を使うための腕輪を手に入れました。魔術師に向けての一歩ですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ