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167 オープニング(1)

 図書館の仕事は、雑務を任されているだけだというのに、覚えることも多く、大変だった。

 リナリの、積極的に働こうとする姿は、尊敬に値する。

 エマは、図書館でのリナリの姿を思い出し、少しだけニヤけた。


 夕食後、馬の世話をしてから、一人、大浴場で沈むように湯船に入った。


 疲れと。

 喜びと。

 応援と。


「…………」


 夜は、ベッドに座り込む。

 スマホを手に取った。


『メモアーレン』のオープニングを何度も見る。


 水の精霊の像から始まるこのオープニング映像。

 ヒロイン、アステールが王都を歩くシーン。

 アステールがランドルフ王太子と出会い、手を伸ばしかけたところで、攻略対象5人の紹介が始まる。

 それぞれのキャラの画像と、名前。そして、王都や城を背景にした日常の風景。

 最後は、髪をなびかせたランドルフと、アステールの笑顔。


 終わると、そのままループさせて、またオープニングを流した。


 キャラ紹介。ジークヴァルト・シュバルツ。

 じっと、その顔を見る。


「…………」


 この人がヴァルなんだと実感してから、以前とは、見方が違ってしまっていた。

 その顔を見るだけで、苦しくなる。息が詰まる。ふわふわする。泣きそうになる。


「も〜〜〜〜〜〜ぅ」


 スマホを振り回した。


 ジークルートを押せないのがもどかしい。

 けど、どうしても私じゃない人との姿を見るのは……。


 できない。


 キャラ選択の画面を眺める。


 ヤキモチ。

 嫉妬。

 独占欲。


「む〜〜〜〜〜〜〜」


 手を振り回すと、


「あっ」


 手が、触れてしまう。

 よりにもよって、ジークルートの決定ボタン。


「や…………っだ…………」


 え?


 目に入ったスマホの画面に映ったのは、紙吹雪の映像だった。


 どこかの町で、紙吹雪が舞う。

 地面を埋め尽くすほどの、紙吹雪。


 何?これ?

 『メモアーレン』のオープニングは、水の精霊の像から始まるはずだ。

 新規オープニング?

 ルート毎にオープニングがあるってこと?


 じゃあ、もしかして……ヒロインと一緒にいるのがジークだったり……。


 そこで、あることに気がついた。


 私……、この場所知ってる。


 画面に、ヒロインらしき少女の、スカートの裾が映る。


 知ってる。


 私、このドレス、知ってる…………。

 ガーベラがあしらわれたドレス。


 だってこれは……。


 混乱する中で、5人のキャラ紹介が始まる。


 いつもと同じキャラ画像。

 けど、それぞれの日常の風景が、王子ルートのものと違う。

 ランドルフの日常風景は、城の庭。隣にはアステール。


 ジークの日常風景は、城でも王都でもない。

 温かみのあるカントリー風の室内の背景。

 これは……私達の学園だ。


 息が止まりそうになる。


 シエロの日常風景も、学園が背景だった。

 教卓に立つシエロの姿。

 ただし、その姿は、ゲームでの12歳のままだけれど。


 声をつまらせながら、クスクスと笑う。

「これじゃ、シエロくん、本当にショタっ子の先生だよ」


 そして、キリアンの日常風景。ポニーテールの少女をお姫様抱っこで抱き上げ、はしゃいでいるキリアンが映った。


 これ……は…………。


 エマの瞳に涙が浮かんだ。


 レーヴのキャラ紹介を経て、最後のシーン。


 今まで通りのジーク。乱雑にまとめた長い黒髪。

 その手を取り共に駆け出す少女は、月色の髪に、夜空の色の瞳。


 私だ。


 それは紛れもなく、エマの姿だった。

ジークルートのヒロインが確定ですね!

そりゃそうだよ!ハッピーエンドなんだから!

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