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152 リナリがゲームをやってみた

 これが……。


 リナリは、デスクに向かってじっと、両手に握っているスマホの画面を見た。


 これが……、あの人と恋愛できるゲーム……。


 ゴクリ、と喉が鳴る。


 じっと見ていると、オープニングが始まる。

 一瞬でも見逃したくなくて、目を皿のようにする。


 5人がそれぞれアップで名前付きで紹介されるシーン。

 リナリが口をへの字に曲げて、顔を真っ赤にしながらそれをじっと見る。


 震える手でスタートを押す。

 心臓が……バクバクする。


 とはいえ、恋愛相手として選べるのは今のところ3人。

 ため込んでいたため息を、口から逃す。


 誰のルートにも、5人は登場するんだよ、ね。


 それなら、と、国王陛下のところに「オススメ」と書いてあったので、迷わずそこを押した。

 どうせ、全部やるんだからどこからだってかまわない。


 あたし…………どうして…………。


 これほど、緊張するはずじゃなかった。


 こんなに気になっているはずがなかった。


 だって……、こんなの…………。


 こんなの…………、恋をしているみたいじゃないか。


「…………」


 最初は、ただ、気になるだけだった。


 この人は、何を考えているんだろう。

 どんな感性を持っているんだろう、って。


 頭の中を覗きたい。

 ただ、それだけ。


 けどそこから、“話がしたい”になり、“もっと近くに行きたい”になった。


 自分でも、こんな気持ち、認めることなんてできなかった。

 だって、あたしが誰かを好きになるなんて。

 こんな風に誰かを、好きになるなんて。


 こんな絵を見ただけで、こんなに心臓が波打つなんて、知らない。


 けど。

 それでも。


 リナリの気持ちに反して、心臓の音は、どんどん激しくなってくる。


 画面にその人が出てきただけで、ビクン、として、スマホを机に置いたまま、放心してしまった。


「…………」

 画面をじっと見る。

 そこには、ふいに出てきたあの人の立ち絵がこちらを見ていた。


「こんなの……」


 でも。

 だって。


 こんなにかっこいいと思わなかった。


 当時の話は、歴史書なんかにも出ているし、穴が開くほど読んだけど。


 でも。


 こんなにかっこいいなんて。


 リナリの目に、涙が浮かんだ。


 あたしがどれだけ好きになっても、好きだなんて、言えない人だ。

 機会があってもこんな気持ち、口にすることなんてできない。


 その代わり。


 このゲームなら、どれだけ見ていても、どれだけ心が弾んでも、誰にも咎められることはない。

 このゲームでなら、幸せな気持ちになっても、誰も困ることなんてない。


「…………」


 ゲーム画面を見つめる。

 画面をタップするごとに、セリフが進む。


 まるで、本当に喋っているみたいだ。


 この気持ちは、心の中に大切にしまっておこう。

 この気持ちは、あたしが見つけた宝物だから。


 けど、出来ることなら。

 出来ることなら、もっと近くに居たい。

 ずっと、支えられる場所に居たい。


 恋愛の相手じゃなくても、あの人の記憶に残るほどの人間になりたい。


 リナリは静かに、手を、祈るように握った。

やってみたシリーズ4人目。

リナリが気になる人も他にいないだろって感じなのですが、こちらもあえて言わない方向で。

女子3人、それぞれ今までずっと一途だったはず、です。

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