15 図書室(3)
涙が落ち着いた頃、その本を開き、読んでみた。
うん、このくらいならなんとか読めそう。
所々わからない言葉はあるものの、内容を読み取ることに困らない程度には読めそうだ。
『大陸の西に位置するセラストリアは、精霊を始祖に持ち、塔の大魔術師を抱える、魔術国家で……』
ふむふむ。
それで……、今は何年なんだろう。
だいたいこういう転生ものだと、年号を聞いてわかったりするんだろうけど。
考えても考えても、『メモアーレン』に年号が出てきた覚えがないのだ。この国に年号があることを、今、手元にある歴史書で知ったくらいには。
同人で出た設定資料集にも、年号や日にちの情報はなかったように思う。
翼竜……、大災厄……、塔の設立……。
どれも、エマが『メモアーレン』で見た覚えのあるものだった。
知ってる。
翼竜が起こした大災厄と、それに対抗するための魔術師の塔。
翼竜にいつ襲われるかわからないから、王都の近衛騎士団や魔術師の塔以外にも、私設の騎士団や魔術師団が多いんだっけ。
だから街にはあんなに戦えそうな人達が多いんだ。
それからもその本のページをめくっていったが、あまり最近のことは載っていなかった。
どうやら本自体が古いらしい。
そりゃあ、この家の主人は平気で5年も帰ってこない人のようだし、図書室の本が新しく揃えられていないのも仕方ないことか。
本を閉じると、表紙に目を落とす。
エマは立ち上がり、スカートを直すと、また本棚の方へ歩いて行った。足取りは、いつになくしっかりとしていた。
『大魔術師による魔術の基礎』……。
そうだ、キャラクターが魔術を当たり前の様に使うところはずっと見ていたけど、さすがに魔術がどういうものかは知らない。画面の中では、魔術名をタップするだけだったから。
パラパラとページをめくる。
どうやら塔の魔術師が書いたもので、子供用らしく、イラストが多い。専門用語の説明も丁寧に書いてある。
よかった。わかりやすい。
『魔術とは、自然精霊の力を借り、人間が扱う術のこと。』
自然精霊?
どうやら炎の精霊の力を借りて炎を起こす大魔術が「大いなる炎」という魔術らしい。
『魔術を使うには、その特定の精霊の言葉を体内で編み上げ、構築することが必要となる。』
なるほど。エマはそんな手順を踏まず、魔術名だけを口に出していただけだった。
そりゃあ、魔術名を唱えるだけで発動するほど簡単なことじゃないか。
もし。
もし、と思う。
本当にこれから学習室に入って、魔術師を目指せば。
ジークだって、王立魔術学習室出身だ。……もし、ジークと出会えることになるなら。
魔術師になろう。
隣に立てる魔術師になろう。
そして、隣で翼竜と戦って、一緒にハッピーエンドを迎えるんだ。
セラストリア王国は、泉の精霊セラが始祖だと言われています。泉の精霊セラは、人魚の姿をしているそうです。しかし、精霊の姿を人間が見ることはないので真実はわかりません。




