149 そんな過去の話を
ヴァルは、自室でうな垂れていた。
ベッドに座ったまま、動かずにいる。
目の前のスマホには、自分の、そして知り合いの姿が、独特なイメージで描かれている。子供向け?それとも少女向けとでも言うか。
……これが俺…………?
確かに、全体的に見て、再現度は高いようだ。
全員随分昔の姿だが、シエロは今でもこんな斜に構えた態度をするし、ランドルフの細くてひ弱そうな所もそのまま。
けれどだからこそ、その隣に凛々しく立つ自分の姿が、他から見ればこうなのだと言われているようで居心地が悪かった。
スタートさせてみると、キャラクターの選択画面になる。
キャラクターと恋愛できる、とはいえ、選べるのは3人だ。
ランドルフに、コンスタン、……そして、俺。
ランドルフとコンスタンは実際結婚もしているし、恋愛もお手の物だろうが、そこで何故、俺?
恋人も婚約者もいた試しがない。
……シエロほど酷い目にあってもいないが。
あの頃の小さなシエロのイラストに想いを馳せる。
シエロとラビラントは……確かになかなか恋愛している顔を思い浮かべることができないタイプだけれど、あのじいさんは今後作る予定なんだろうか。
友人と疑似恋愛をする気も、ましてや自分と擬似恋愛をする気もないので、“アルバム”という所を押してみた。
「…………」
ざっと見て、ゾッとする。
「こ……れ…………」
思い出の中の様々な場面が、イラストになって載っていた。
「嘘だろ…………」
頭を抱える。
事実を垂れ流しすぎだろ……。
本人の了承も無く。
一人で歌っていた場面もあれば、翼竜に食い殺された時の場面まである……。
あのじいさんはなんでこんなことまで知ってるんだ。
これを……?
あいつが見たっていうのか…………。
こんな、無様な死に様まで……?
こんなもの見せられて、あんなに熱を帯びた瞳で……、あんなに泣いて…………。
「…………」
悲しみと、自己嫌悪にも似た感情。
けれど、それと同時に。
俺が……、死んだからこそ……。
そんな風にも思ってしまう。
俺が死んだからこそ、あいつは、あれほどまで俺に囚われている。
心の中を俺でいっぱいにしている。
そんな心に湧いてしまう淡い悦びを押しやり、重く深いため息を吐く。
こんな死に様晒して、一体どんな顔でいればいいのか。合わせる顔がない。
それも、過去をここまで晒して、顔はこのキラキラしい顔だっていうんだから。エマが好きなのは、俺そのものじゃない可能性だってある。
「…………」
じっと、イラストの自分を眺めた。
イラストになった昔の自分。
本当に、“ジーク”だったことを知られてしまったことは、デメリットしかないんじゃないだろうか。
ヴァルは、一人、うんざりした顔でただただ遠くを見つめた。
やってみたシリーズ。2人目はこの人。
恋人もいたことがないのに恋愛シミュレーションされるかわいそうな人。