148 レンアイ
あれから程なくして、シエロ、ヴァル、エマの三人は、再度学園長に呼び出された。例の“恋愛シミュレーションゲーム”のスマホが、それぞれに渡された。
リリース時、言語が日本語になっているものの、シナリオライターや絵師さんがこの国の人間のため、最初はこちらの言語で書かれるし、こちらの言語のバージョンも存在するらしい。
やらなくてもいいように、それぞれ、ある程度進めてある状態、スチルもある程度アルバム機能で見られるようになっている状態だということだ。
シエロは、部屋に入るなり、貰ったばかりのスマホをベッドへ放り投げた。
マントを綺麗にハンガーにかける。
ベッドに腰を下ろすと、真っ暗な画面のスマホをじっと見た。
「レンアイ……」
電源ボタンを押すと、例の恋愛シミュレーションゲームのオープニング動画が流れてきた。
「…………」
どうやら、このキャラクター達は、それぞれ15年程前の姿をしているようだった。
よく見れば、懐かしい雰囲気を纏っている。
まだ王になっていないランドルフ。
ツンツンしていた頃のヴァル。
二人は、いつでも一緒に居た兄弟子だ。
そして、いけ好かないコンスタン騎士団長。
マイペースで何を考えているかわからないラビラント。
そして、このメンツを見ると、どうやら歴史書を作ろうとしたというのもあながち嘘ではないことがわかる。
この国の魔術の要である大魔術師の弟子三人。いつだって先陣を切っていた騎士団長。そして、前回の翼竜戦で、参謀を務めていたラビラントだ。
全員、前回の翼竜戦でのメインメンバー。
それにしたって、何をどうするとこのメンバーに恋愛をさせようということになるのか。
異様に似ているとはいえ、少女向けのイラストになっている。音楽も、何故かキラキラとした軽快な音楽だ。
画面を進めると、キャラクターの選択画面が出てきた。
どうやら、誰と恋愛するか決めてから物語を進めることが出来るらしい。
とはいえ、現在選択できるのは3人。
ランドルフ、コンスタン、ヴァル……。
やっぱり、僕はいない、か。
この3人は、既婚者に恋愛中に、とシナリオもさぞ書きやすいことだろう。
僕は……。
「ハハッ……」と自分を嘲笑する。
僕自身でも、自分が恋愛する姿なんて思い浮かばない。
“アルバム”という場所を覗くと、見覚えのある光景が並んでいることに気がついた。
「これは……」
ヴァルとコンスタンがケンカする場面、ボロボロになったランドルフが元気付けられる場面、小さなシエロがヴァルをからかう場面。
確かに、そこには僕がいた。
苦笑する。
これは……、思った以上にリアルな日記になっているようだ。
最後の画像を見て、手を止めた。
「…………」
ヴァルは、大丈夫だろうか。
……自分が死ぬシーンなんて、きっと気分のいいものじゃないだろう。
やってみたシリーズ。1人目はもちろんこの人。シエロくん!
シエロくんが人間的に少しでも興味あるのなんてヴァルぐらいのものですからね。
シエロくんルートが作られる日が来るといいですね。