表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/240

144 エマの来た道

 エマは、痛いほどの視線を感じながら、話をした。


「私は……、その“日本”という国にいた記憶があるの」


 ヴァルと、シエロが、押し黙る気配がする。


「この、『メモアーレン』という、学園長が作ったゲームをやってた。すごく、好きなゲームだった。その……ジーク様が…………、好きで…………」


 ああ、こんな話をすることになるとは……。

 ヴァルの方が向けずに、若干シエロの方を向いて話していると、シエロが、「ふむ……」と口元に手を当てて神妙な顔をするのが見えた。

 そして、シエロが呟く。

「僕じゃ、ない……」


 その一言やめてええええええええ。いたたまれない!!


「でも、たまたま、交通事故で、死んでしまったの」


 ヴァルとシエロが、息を呑む。


「気付いたら……、この国の、クレスト子爵の家に、前世の記憶を持ったまま生まれていた」


「転生……?」

 と、呟いたのは、シエロだった。


「そう、転生」

 言うと、エマは顔を上げた。

「私を転生させたのは、学園長なんですか?」


 学園長は少しの沈黙の後、口を開いた。

「そうじゃ」

 それは、それが当たり前だというような口調だった。

「エマ……。お前さんは、死んだ後、ジークの魂に惹かれ、自分で異界の門をくぐってきたんだ」


 エマは、頭を抱えた。

 また、ジーク…………!

 どうなってるの、私のジーク愛……。

 それも、門をくぐったのが、自分で、なんて。

 恥ずかしすぎて、もうヴァルの方が見られない。

 お父様、お母様、マリア……、もし助け出してもらえるなら今がいい……。


「ジークの魂と、エマの魂。二人を拾ったワシは……、残っていた秘術を使って、二人を転生させた」

 学園長は、顔を上げた。

「それが全てだ」


「…………」

 三人は、茫然と学園長を見た。


 話はそこで終わりだった。


 部屋を出る直前、エマは、ふと思いついたことを口にした。

「もしかして……、『メモアーレン』を作ったマループロジェクトというサークルさんは……」

「ふふふ」

 大魔術師が今日一番楽しそうに笑った。

「そうじゃ。ワシのサークルじゃ。多忙な身ゆえ、イベントなどには参加できんかったが……。エマ、お前さんのメッセージは、ちゃんとワシに届いておった。ありがとうな」

「…………」


 そうだった。

 嬉しかったことはちゃんと伝えなきゃと思って、通販する時や機会がある時には、よかったこと、感動したことなんかを必ず、言葉で伝えていたんだ。


「ふあっ……」とエマが小さな声をあげたかと思うと、そのままぼろぼろと泣き出した。


 なんだか、衝撃だった。


 ただただ、嬉しかった。


 私が生まれ変わる前に生きた人生は、それほどいいことはなかったけれど。

 ジークという心の支えがあったこと以外は、あまりいいものもなかったけれど。


 全部、繋がってたんだ。


 私がいた場所と、ジークが……ヴァルがいる場所が。


 私の人生はちゃんと、ここまで繋がっていたんだ。


 ……ずっと、ジークを好きでいてよかった。

恋愛シミュレーションゲーム『メモアーレン』の音楽は、精霊たちが歌った歌を、録音したり、大魔術師自ら編曲したりしたものが使われています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ