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137 秋祭り2日目

 2日目は、手伝うものもなかったので、みんなでお祭りを回ろうということになった。

 2日目もかなりの人出で、5人で歩くとなると大変だ。


 みんなでアイスクリームを食べながら、ベンチをひとつ確保した時のことだった。

「あたしは、古書広場に行きたいな」

 希望したのはリナリだった。

 古書広場は、このお祭りに乗じて、古書店が集まるマーケットのことだ。

「ぼくが一緒に行くよ」

 メンテが申し出る。

「それって南の方?」

「そう」

「アタシ、そっちのドーナツ欲しいんだ。アタシも行く!」

 チュチュがそう言って、結局3人で別の方へ行ってしまった。

 ベンチにのんびり座っていたヴァルが、ぱもぱもっとアイスを食べてしまうと、エマの方をふいっと見た。


 やっとなんとか、一緒にいることに動揺しなくなってきたのに。

 突然視線を向けられるとびっくりしてしまう。

 不意打ちはまだ慣れてないから!

 全然慣れてないからやめてほしい!


「エマは?」

 ヴァルが、少し楽しそうに聞く。

 ヴァルも、お祭りでちょっと浮かれているのかな。


「散歩でもするか」

 と言いながら、ふいにヴァルが立ち上がり、いつものように手を差し出した。


「…………」


 その手を凝視する。

 そして、いつもの通り、なんとかその手を取る。


 立ち上がらせてもらうと、ふいっと手を離した。

 できるだけ、自然に。


 こんなとき、わからなくなってしまう。


 この胸の高鳴りが何なのか。


 だって、ヴァルの顔を見ると、どうしてもジークのことが頭をよぎってしまう。


 じゃあ、推しと会った時の興奮なんだろうか。


 自分が推しと会った時のことなんて考えたこともなかった。


 正直、エマは推しであるジークと、どうこうなりたいと思ったことはない。

 手を繋ぎたいなんてことも。

 自分が隣に居たいなんてことも。


 そこに存在してくれるだけで幸せだった。

 存在を感じられるだけで、生きられると思った。


 けど、きっと、もちろん推しと会うことできたら、興奮して大変なことになってしまうだろうことは、目に見える。

 じゃあ、この胸の高鳴りはそういう意味?


 そして、思う。


 この人はヴァルなのに。

 あまりにも失礼じゃないか。


 ヴァルの隣を歩いて、途中、鼻をくすぐる匂いを感じた。

 そちらの方を向くと、そこには花屋があった。

 今日は特別に、豪勢な花冠をたくさん売り出しているようだ。


 綺麗。


 一瞬、目を留めただけなのに、そこでヴァルが立ち止まる。

 気付くと、ヴァルはすでにその中から見てもなかなか大きな花冠を買ってしまっていた。


「……え」


 驚く暇もなく、ばふっと頭に花冠がかぶせられる。

 大きな花冠は、なんとかずり落ちずに頭の上に鎮座していた。

 何が面白かったのか、目の前のヴァルは笑いをかみ殺している。

 流石にこの花冠、頭に対して大きすぎたんじゃないだろうか。

「……ありがとう」

 その言葉に、ヴァルがいつもの偉そうな笑顔で応えた。

秋祭りは年に1回の町を挙げてのお祭りです。

町全体がお祭り仕様になります。出店も数多く、中央広場の舞台で演劇や演奏が行われ、道路もバンドやパントマイムなどで賑わいます。

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