130 幸せにする方法(2)
その日の午後、エマはチュチュと二人、町まで買い物に来ていた。
町に出るのは自由だけれど、できるだけ2人以上でと言われている。
「なんだか今日は賑わってるね〜」
町はいつになく賑わっていた。
その賑わいにつられて、チュチュの足取りが軽い。
「あら、学園のお嬢さん方」
声をかけられる。
振り向くと、そこに居たのはお弁当でお世話になっている食堂のおかみさんだった。
「こんにちはー」
おかみさんも、ニコニコとしている。やはり、町全体がちょっと浮かれているようだ。
「賑やかですね」
「まだ祭りまでけっこうあるんだけどね。祭りの出店募集が始まって、みんな浮かれちゃってね」
「もう準備始まるんですね」
「学園は出店しないのかい?」
そう言われ、はっとする。
「学園で出店かぁ……。考えたこともなかったね」
「でも楽しそう~」
チュチュの目がキラキラと輝いた。まるでエメラルドだ。
お祭りに参加したら、ヴァルは喜ぶだろうか。
近頃のエマは、どうしてもヴァルを幸せにする方法を考えてしまっていた。
その日の夕食時、テーブルの上のハンバーグがなくなった頃。
エマとチュチュはみんなに、祭りの出店について話をした。
「いつもお世話になっている町のお祭りに、参加するのって、楽しそうだと思ったんだ」
真っ先に「いいね」と言ってくれたのは双子。
ヴァルは「ふ〜ん」と言った顔で二人を見ていた。
シエロは、少し悩む顔を見せ、それから、
「たまにはそんなイベントもよさそうだね。二人に進行を任せてもいいかな」
と笑顔を見せた。
「はい!」
翌日の授業は、出店に関する話し合いになった。
エマが黒板にメモを書き、チュチュがみんなに向かって話をした。
普段は普通の授業ばかりなので、こんな話し合いは珍しい。
「お店でもいいんだけど、広場に設置される外舞台を借りることもできるんだって。楽器演奏でもいいし、演劇でも!」
チュチュがみんなの顔を見回す。
「何かやりたいことがある人ー!?」
う〜ん、とみんなが考え始めた頃。
おずおずと、手を挙げたのは、リナリだった。
「リナリ!」
チュチュが笑顔で叫ぶ。
「あ、あたし……劇がいいな。こんなのどうかな」
と言って見せてくれたのは、先日見せてくれた恋愛小説だった。タイトルは、『明けの精霊物語』と書いてある。
「脚本はあたしが書くから!」
という珍しいリナリの熱意で、反対する者もなく、学園では、町の祭りで、演劇『明けの精霊物語』を演じることになった。
その日の午後には、エマとチュチュが二人、町の教会へ出店届を提出した。
この国には教会があります。
冠婚葬祭、町のお祭りなどを取り仕切るのも教会の役目です。