11 屋敷の外(4)
私だって。
私だって、こういう世界観の物語にハマっていたのだ。
『メモアーレン』の世界を現実にしたらこんな感じなんじゃないかって気すらする。
好きじゃないわけない。
もちろん、ここに来れて嬉しい。
けれど。
ジークはどこなの。
画面の向こう側に、いつでもいてくれるのが嬉しかった。
たくさんのグッズは、見るだけで嬉しくなった。
でも今は?
エマは、周りを見渡した。
ここには……スマホなんてないな……。
怖い。
考えた瞬間、恐怖に押しつぶされそうになる。
戦う術も持たない私が。
こんな世界で生きていけるの?
ジークがいなくて生きていけるの?
怖い。
おかしな苦笑が漏れる。
ここにジークが居てくれれば。
受験勉強の時だって、スマホにジークを表示させて、眺めながら勉強した。
元気じゃない時は必ずジークの声を聞いた。
居てくれれば、どんな場所も怖くなんてないのに。
今になって思う。
私はこんなにもジークが大事だったんだ。
ただのゲームのキャラクター。でもずっと、私を守ってくれてた。
あの声が、台詞が、あの瞳が、あの笑顔が。
自分で思ってた以上に。
どこかの国であっても、きっとまたジークの顔が見られるって。
グッズを取り寄せて、スマホを手に入れて……。
でも、それはもうどうにもできないことらしかった。
死んでしまったんだからしょうがない。
もう、ゲームはできない。
『メモアーレン』の続きはできない。
グッズを手に入れることもない。
「ぅ……ぁ………………」
泣いたってしょうがない。
しょうがない。
解ってる。
取り返しがつかない。
現実が見られない。
予約していたミラーとマグカップのことを、ふと思い出した。
もう見ることができないんだ。
ジークを見ることができないんだ。
今まで頑張ってたのに。あんなに好きだったのに。
「あああ…………」
もうどうにもできないのはわかってる。
死んでしまったのが自分のせいだってことも。
後悔したってもう遅い。
私は、自分のせいで、もうジークの顔を見ることができない。
その現実が……。きっと誰にもわかってもらえないこの絶望が、私の心の抉ってくる。
こんなことで泣くなんて、馬鹿げているだろうか。
生活のことでもなく、友達のことでもなく、こんなことで自分のしたことを後悔するなんて馬鹿げているだろうか。
思い出すのが、ゲームのことだなんて、薄情ものだと罵られるだろうか。
「うわあああああああああああ」
けど、私にとってはそれが心の支えだった。
死んでしまったのは悲しいけれど、それはしょうがないから。自業自得だから。
例えアップデートからどれだけ遅れても、いつか大きくなったらまたジークの顔が見られるって。
それだけを心の支えにしてこの世界を生きてきた。
悲しみで溢れた私の心は、もうどうすることもできなかった。
どうすることもできなくて、ただ声を上げ続けた。
声を上げて泣くことを、やめられなかった。
マリアの声がする。
困惑した声を発しているのがわかる。
困らせてるのはわかってる。
困らせたままでいいだなんて思ってない。
でも、私は、自分が声を上げて叫ぶように泣くままでいた。
現実を見ることができなかった。
「やだあああああああああ」
現実を見ようとすると、頭が真っ白になって、また涙が溢れ出した。
「こんなのやだああああああああああああ」
マリアに抱きしめられることに抵抗する。
誰にも触られたくない。
手を出してくるマリアに殴りかかったが、3歳のこの体では、そんな抵抗も虚しく、抱きしめられた。
抵抗するのをやめて、潰れるんじゃないかってほどマリアに抱きついた。
「あああああああああああああ」
抱きついたまま、また、大声で泣いた。
好きなゲームができなくなるなんて悲しいよね!!
またグッズに囲まれた生活ができたらいいね。
この先、ほのぼのラブストーリーになるのは確実なのでご安心ください!恋のお相手が出てくるのは20話くらいです。




