101 同盟を結ぶ者
「…………同盟?」
エマがあまりにもきょとんとした顔をしたので、シエロが「ん?」とかわいく首を傾げた。
「同盟を結んだ覚えなんて……ありません」
えっ、とシエロが少し驚いた顔をした。
もうっ!いちいち見応えのあるいい表情するんだから……っ!
けれど、なんと言われてもそんな同盟を結んだ覚えなどない。
何せこっちは、生まれた時から記憶があるのだ。
大魔術師に初めて会ったのが、あの勧誘に来た日だというのは間違いない。
となると、両親が勝手に……?
チュチュや双子と同等に思えるほどの、私の価値とはなんだろう?
父は、優秀な商人かもしれないけど…………。
「大魔術師であるうちの師匠は、エマと『ジークを幸せにする同盟』を立ち上げたって言ってたよ」
「え…………?」
ジーク……???
ジークって…………ジーク?????
『ジークを幸せにする同盟』って……何その『メモアーレン』のファンクラブみたいな名称は……!!!???
た、確かにそんな同盟があったら入っちゃうかもしれない。……入った覚えはないけど。
紅潮した顔でシエロを凝視するエマの顔を見て、シエロはとびきりの笑顔を見せた。
「その様子だと、まったく心当たりがないわけでもないみたいだね」
最後に、シエロはまた真面目な顔になる。
「伯爵邸には僕も行く。とにかく、伯父のクリークには気をつけて欲しい。ヴァルもそうだけど、エマ、君もね」
シエロは、心配そうな顔で微笑んだ。
その日の夜は、なかなか眠ることができなかった。
頭が混乱する。
どうして、ヴァルが殺されそうになってるの。
どうして、突然ジークの名前が出てくるの。
翌朝はなかなかベッドから起き上がれず、ルームウェアのまま、のんびりと宿泊の準備をした。
ドレスに靴に、と準備していくと、なかなかの量の荷物が必要だ。
昼過ぎ、さすがにお腹が空いたので、ルームウェアのまま食堂に出ていく。
誰もいないだろうと思い、食堂に入っていくと、クッションコーナーのクッションがモコモコと動くのが見えた。
「ヴァル」
今、あそこで寝転がってそうなのはヴァルしかいない。
予想通り、クッションの中からヴァルが顔を出した。
「今起きた?」
ルームウェア姿を見て、ヴァルが軽く首を傾げる。
「あ、ううん。部屋でゴロゴロしちゃってた」
「昼食、作ってあるよ」
そう言われ、キッチンを覗くと、オムライスがひとつ、そこに置いてあった。ワンプレートで、レタスにミニトマトも付いている。
「わ……あ……。ありがとう……!」
泣きそうになるくらい、ちょっと感動してしまう。
私のことまで考えてくれてたなんて。
「いただきまーす」
と、元気にオムライスを食べる。
オムライスを食べている間、ヴァルはずっとクッションに埋まって魔術書を読んでいた。
エマがこの学園のいる理由が明らかになったところで!
次回、とうとうシュバルツ伯爵邸へ!




