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100 内緒話

 夜。

 エマは部屋着のまま、寝ることもせず、ベッドに座っていた。


 窓の外を見る。もう遅い時間だけれど。

 ……いつでもいいっていうことは、今でもいいんだよね。


 そっと、音も立てずに部屋から出ると、出来るだけ足音を立てないようにして、裸足のままシエロの部屋の前へ行く。

 扉をノックしようか迷っていると、スッと扉が開いた。


 中では、シエロが、待っていた。


「…………」


 いつものマントを外しただけの格好だったけれど、どこかしら力が抜けていて、正直色っぽい。

 ……なんて攻撃力…………!!!!


 扉がぴったり閉まっているのを確認すると、シエロはベッドに腰掛けた。

 ポンポン、と隣を示す。

 部屋には2人座れるほどの椅子はない。

 エマは、ちょこん、とベッドに腰掛けた。


「……それで、お話って……」

 言いかけると、シエロの指がエマの唇を塞いだ。

 シエロはそのまま指を自分の口元に持っていく。

 どうやら、ヴァルには聞かせられない話のようだった。


「……大丈夫だとは思うけど、伯爵邸で気をつけてほしいことがあるんだ」

 声を落として、静かにシエロは言った。

「この話をエマにしたのがバレると、ヴァルに怒られちゃうかもしれないから、静かにね」

 そう言って、シエロは一拍、息をついた。

「ヴァルは、殺されかけたことがあるんだ」


「…………え?」


 エマは、シエロの顔をまじまじと眺める。

「それって、どういう……」

 シエロのように静かに聞くと、心配そうにシエロの顔を覗き込む。

「ヴァルが4歳の時だ。犯人はわかってるんだ。伯父のクリーク」

 シエロの視線が、どこか遠くを見つめた。悲しい色をしていた。

「……ジークが死んで、家を継ぐのが弟のエーデルシルトだけになった時、その伯父がエーデルに貢ぎ始めたんだ。借金までして。嫁候補だのなんだのまで連れてきて」

 エマは、シエロの話を、静かに聞いていた。

「けど、ヴァルが生まれて4歳になった時、エーデルはヴァルに家を継いでほしいと言い出したんだ」

「…………え?」

「その頃のヴァルは、人前にも出ず、表に出てこれない暴れん坊だなんて言われてて。伯父は慌てたんだよ。そんな人間より御しやすそうなエーデルが家を継いでくれないと困る、ってね」

「そんなことで……」

 エマの顔が、どんどん曇っていく。

「シュバルツ家の使用人を脅して、寝首をかこうとしたのさ」

 シエロが、呆れたような顔をした。

「最終的に寝ている間に毒を飲まされて、死にかけたんだ」

「え……」

 ヴァルが……、死にかけた?


「……犯人は明らかなのに、証拠がないんだ。捕まってもいない。伯父は今でも元気に伯爵邸を闊歩している」

「そんな……」

「そこで、大魔術師と僕は4歳のヴァルを連れて、この森に引き篭もったんだ。この学園はね、ヴァルを守るために作ったシェルターなんだよ」

「学園長が……?」

 わざわざ……?


 シエロの顔をじっと見たけれど、何も掴めるものはない。


「もう、今のヴァルなら誰かに襲われても困らないけどね」

 と、ちょっとだけ笑う。


「そして、君達を集めたんだ」

「私達……?」

「そう。信頼のおける騎士団長の娘。木の精霊の子供と、それを守るトーラリス族の族長の子供達」


 じゃあみんな……、志望して来たわけじゃないってこと……?


 そして、シエロはエマの方を向いた。

「そして、君」

「私……?」

 きょとん、とする。

「大魔術師と同盟を結んだ、君だ」


 …………?

なんと100話です!ここまでお読みいただきありがとうございます!!

まだまだ続くよ〜!

恋愛をどーんと進める展開で突き進みます!これからもどうぞよろしく!!

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