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10 屋敷の外(3)

 街が近づくごとに、左右に所々、家が姿を現す。

 どこかヨーロッパのオシャレな街といった様相で、花が多く、雰囲気はよかった。


 街へ降り立ったエマは、呆気に取られた。

 小綺麗な商店が多い。人も多く、みんなが笑っている。活気溢れる街だった。

 ヨーロッパの方へ行けば、こんな街もあるだろうと思えるような、街並み。

 店の前に吊り下げられた花。明るいショーウィンドウを持つ店が多い。

 けれど、どこかしら自分とは世界が違うと思うのは、周りの人々の格好のせいだろう。


 エマのすぐ横を、剣を携え、鎧姿の剣士の二人組が通り過ぎる。


 そう、武器のようなものを携えている人間が多いのだ。


 戦争をしてるなんて話は聞かない。こんなに騎士がいるわけはないし、治安が悪い……?


 ただでさえ3歳児なので身長が1メートルほどしかないのだ。

 剣を携える人がこんなにいるなんて怖いことこの上ない。

 マリアが手を繋いでくれているけれど、どう歩けばいいかわからず躊躇してしまう。


 それに……。


「…………?」


 じっと街の中を見る。

 たくさんの人たちをゆっくりと見ていく。

 マントの人……マントの人……騎士っぽい格好の人……普通の親子……マントの人……お金持ちそうな女性……。


 妙にマントを着た人が多い。

 それも、フードを目深にかぶっていて、顔を隠している人が。暗い色のマントの人が所々にいる様は、異様にも思える。黒、緑、青、赤。ベースの色はまちまちだけれど、どの人のマントも総じて暗い。


 この街は、別に寒いわけじゃない。半袖短パンの人も時々いるくらい。


 その中でもあの人が持っているのは……。杖?

 そのマントの男性は確かに杖を持っていた。

 それも、歩きやすくするための杖という感じではない。てっぺんに赤い宝石が飾られた杖は、まるで魔法使いの杖のようだった。


 まるで、魔法使い。

 まるで、ファンタジー。


 ファンタジー世界に紛れ込んでしまったみたいだ。それこそエマがやっていたゲームの世界のよう。

 よく見れば、そこここにそんな雰囲気を帯びている。

 薬屋のような看板はどこか薬草を思わせる。わき道の薄暗い店の前には武器屋のような看板が掲げてある。行き交う人たちは、騎士らしい騎士もいるけれど、軽装に剣を携えた者も多い。


 もう、地球のどこかだなんて、思うことはできない。

 中世に生まれ変わったわけでもない。


 ぼんやりとしていたけれど、ふわり、と抱き上げられる感触で、現実に戻される。

「人が多いですね」

 マリアが抱き上げてくれたのだ。どうやら、人混みで身動きが取れなくなったと思われたらしい。

「あちらへ向かいましょうね」

 あやすように言うマリアの声は、それでもどことなくいつもと違う華やかな声が混じっていた。マリアであっても街を歩くのは嬉しいのだろう。だって空はこんなにも晴れていて、人々はこんなにも笑っていて、魅力的な物がこんなにも溢れているのだから。

思った以上にファンタジー世界ですね。とはいえ、この世界には魔物や魔獣などはいません。脅威なのは翼竜ただ1匹です。

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