海の月になる
泳いでいても動けない
水を掴み押しやって
水を蹴り跳ね上がって
そんな気がしているだけ
焦燥感が体を動かそうとし
脳は既に動作を止めていて
恐怖も神秘も忘れた
海の中で揺れる月たち
昼も夜も確かに群れで輝き
焦り慌てる私を避けて揺れる
流れに逆らおうとせず
群れから外れようとせず
誰かを攻め立てようとせず
自然のあるがままに揺れる月
その群れに身を強ばらせ
私も同じようになっている
私も海の月になっている
他の月が見下ろしてきて
その明るさが届かなくなるまで
見守ってくれていた