67、VSグリフォン
グリフォンは巨大な鷲の翼と上半身にライオンの下半身を持つ聖獣だ。エターリアの聖結界を守る役目を担っており、国の国章にも描かれている。
「実際に見るのは初めてだな」
ユーリウスは目の前に立ちはだかる巨大な鳥に似た生物を見上げた。
鋭い鉤爪がユーリウスの首を目掛けて躊躇なく振り下ろされる。
すんでのところでかわして、体勢を整える。
グリフォンにはユーリウスが得意とする聖魔法が効かない。グリフォンの属性とは真逆の闇か時空、もしくは翼の動きを封じる風魔法が有効だ。
「やってみるか」
前世でアストリットが倒せたのだ。彼女の得意技を連発するのが得策だろう。
「巻き起これ嵐 我が祈るままに
サリフ イリュート」
嵐を起こす魔法陣が浮かび上がり、グリフォンの行動力を奪った。
「やはり有効か。ではこれはどうだ。
大地を揺るがす営み 大気を振るわす風よ その力我に与えん
マダイン サフリュート」
巨大砂嵐が巻き起こりグリフォンを地面に叩きつけた。
「締めはアルカシア マダインか」
自身が教え込んだアストリットの得意技である最強魔法を唱えようとした時、グリフォンの目が妖しい光を帯びた。
金縛りに合ったように射すくめられ、体が動かなくなる。
魔眼だ。
あらかじめ無効化の魔法を自身に掛けてきたが、全く効いていない。
「ぐっ・・」
ユーリウスはその場に立っていられなくなり、両手を地面について蹲った。
『其方、前回の者の身代わりとなったものだな』
グリフォンがユーリウスの目の前にバサリと降り立ち、胡乱げに顔を覗き込んだ。
『あの者は取得者としては不適格だった。精神的に幼すぎて神の愛を取得しても己の私利私欲の為に使いかねなかった。だから殺すはずだったのだ。泣きながら逃げ惑い、やっと仕留めたと思ったら生き返り反撃してきた。全く余計な事をしおって』
「エターナルリーベが必要だったのだ。取得の為ならばどんな手段でも使う」
『そのせいで時が巻き戻ってしまったのではないか。責任はお前にもある』
「責は全て私が負おう。今度の世界は神の愛にそぐう慈愛に満ちた世界にすると約束する。だからエターナルリーベを渡せ。私を取得者として認めろ」
『力なき者は死ぬ。それが神の摂理だ』
声なき声が響き渡り、強力な聖魔法が放たれる。
光に飲み込まれる寸前にユーリウスの右手首のお守りが反応し、それを弾いた。
「反射魔法、こんなものまで・・」
このお守りは前世のユーリウスがアストリットのために作ったものが元となっている。
ユーリウスは一切作り方を教えなかった。
知っていたら彼女はこの魔法陣を使わなかっただろう。
「リティ、君は本当にバカだ」
一体どれほどの時間をこのお守りの解析に注いだのだろう。恐らく調合室にこもりきりで、とてつもない時と労力を費やしたに違いない。
「何故作り方を教えなかったのか君は考えるべきだった」
通称、生贄の魔法陣と呼ばれているそれは己の命をかけて相手を守る究極守護魔法だ。
アストリットはグリフォン戦で死ぬはずだった。
身代わりになって死んだユーリウスを見て精神耗弱状態に陥り聖結界を壊してしまったアストリットは、無意識にエターナルリーベの永久魔導機関を発動させて時を巻き戻した。
「私の死がリティアーナに返るというのなら、私は絶対に死ぬわけには行かぬ。同じ生は二度も経験すれば充分だ」
グリフォン相手に聖魔法を使うのは効果が薄くなるが、一か八かだ。アストリットのアルカシア マダインが効いたのなら、あるいは複合魔法なら聖魔力も有効なのかもしれない。ユーリウスはありったけの魔力を杖に込めた。
「纏え悠久の力 請え命ある者達よ 天空にかかるきざはしの先に 我が祈りにより一閃に臥せ
アルカシオン スティーリア」
天空に聖なる階がかかり、魔力が溢れる。それは聖獣グリフォンの体に纏わりつき翼の動きを封じた。雄叫びを上げながら逃れようともがいているグリフォンを階段から降りてくる聖者たちが囲んだ。
「抗わず今は滅びよ。死と再生もまた神の摂理だ」
ヒクヒクと翼を震わせながら横たわるグリフォンの体から魔法陣が浮かび上がりユーリウスの胸に吸い込まれてゆく。
「これがエターナルリーベなのか」
体内魔力が凝縮されていく。
エターナルリーベはあらゆる時を越えられる永遠の愛、全ての試練を乗り越える悠久の力。
世界を動かす魔導力を自由自在に使うことができる魔力の源泉。
「神よ、私にあなたの愛を授けてくださったことを感謝いたします」
これで平和な世界を築くことができる。
誰も傷つくことのない、誰もが笑い合える世界を。
「私の命が続く限り、あなたの愛に報いることを誓いましょう」




