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54、救出

『ラナディア、見て見て本物の王子様だよ』


『アスティ、彼に近づいちゃだめよ。ユーリウス殿下は女を取っ替え引っ替えする遊び人なんだから。アスティみたいな子はすぐに食われて捨てられるのがオチよ』



こんなことなら捨てられてもいいからユーリウス様に食われておけば良かった。

どうして後生大事に取っておいた前世の私。



 ディートフリートは私のエターナルリーベだけでなく、体まで狙っているらしい。いやらしい目つきで舐め回すように私の全身を見ている。


私は、こういった危機に陥ったことがない。

周囲は常に安全な者で固められ、常に守られてきた。

大切にされて、私に近づく危険なものは側近達により排除されてきた。


「ディートフリート様にとって、私なんて全然楽しくないと思いますよ。男を喜ばせるような手管も知らないし、子供だし、経験もないし」


「ほう」


ディートフリートが嬉しそうにニヤリと笑った。

どうやら墓穴を掘ったみたいだ。どこかはわからないが、かえって興味を持たれてしまった。


「胸なんてまだペッタンコですよ。触り心地以前の問題ですから!」


「それのどこが問題なのだ」


何、この変態ロリ野郎。

私なんて食べても全然美味しい年頃じゃないのに。


「この女を寝室へ運べ」


「しかし、ペトロネラ様がここから出すなと。上の階はここよりも無効化の威力が落ちます」


「こんなカビ臭い場所では楽しめないであろう。早く連れ出せ!」


護衛達は渋々私を立たせると、二人がかりで抱えて階段を上がり、二階の寝室へと運んだ。

半泣きになりながら抵抗したが魔法の使えない私は無力だった。

そのままベッドへ勢いよく放り投げられる。

いつの間にか準備されていたロープでベッドの欄干に縛りつけられ身動きできないようにされた。


「わたくしはユーリウス様に操を立てているんです!あなたみたいな外道にいいようになんてされるものですか!」


「そんな生意気な口が聞けるのは今だけだ。ユーリウスの大事なおもちゃを汚したら、あいつはさぞかし悔しがるだろうな」


ディートフリートが歪んだ笑みを浮かべた。

おもむろに私の上にのしかかるとブラウスのボタンを外し始める。


「いやっ!!私の体はユーリウス様の物なんだから!」


「黙れ!ユーリウス、ユーリウス、うるさいぞ!」


身を捩って抵抗したら指先から魔力を流された。

体がビクンと跳ね、恐怖で顔がこわばる。

体内魔力の直接交換は無効化の範囲外になるらしい。

体の中にディートフリートの魔力がじわじわと浸透していく。全身に鳥肌が立ち、吐き気が込み上げた。

前世でユーリウスに流された時は、このようではなかった。

もっと温かくて心地の良い、真夏の海のさざ波のようだった。


「ううっ、ユーリウスさまぁ・・」


「まだユーリウスの名を出すか!」


怒ったディートフリートが一気に魔力を叩き込んできた。仄暗い魔力が体の中に溢れる。


冗談じゃない。

私はこんな変態男に襲われるために半世紀近くも後生大事に純潔を守ってきた訳ではない。

ユーリウスと結婚して、熱い初夜を迎える日を夢見て大切にしてきたのだ。

ペトロネラは、王家の男はエターナルリーベが欲しいだけだと言っていたけれど、そのエターナルリーベだってユーリウスと結婚するためだけに私は取りに行った。

そう、あの時切羽詰まった様子だったユーリウスの足元を見たのはどちらかというと私の方だった。

私の方こそエターナルリーベを利用したのだ。

女神様との約束を果たしたのも全てはユーリウスと再会するためだ。

やっとユーリウスと会えて、ユーリウスの気持ちが私に向いてきたと言うのに、こんな所で諦めてたまるものか!

ユーリウス以外の男に私の大事な貞操を奪われるわけにはいかないのだ!!


「触らないで!!」


体内の魔力が反発して膨れ上がる。

バチバチと部屋中に火花が散って、押し出された魔力がディートフリートの体を弾き飛ばした。

ディートフリートが壁の横にくず折れてプルプルと身を震わせている。


「この、アバズレが!」


ディートフリートの口から貴族らしからぬ言葉が飛び出た。

サイドテーブルに置かれた短剣の鞘が抜かれ、私に向かって振りかざされる。

ブラウスが裂け、血痕が床に飛び散った。

胸のエターナルリーベが血を滴らせて、淡い光を放ちながら下着の隙間から覗いた。


「やはりな。この剣からは魔力が抜いてある。その腕輪は魔力のあるものしか反応しないようだ。!!早速エターナルリーベを渡してもらおう」


「あなたみたいな非道な男には絶対に触らせない!」


「無理矢理にでも剥ぎ取るまでだ!」


振り下ろされた短剣が窓から飛びこんできた矢によって弾かれた。


「リティアーナ!」


ベランダに通じる窓がガデャンと派手な音を立てて割れ、ユーリウスがビーザムに乗ったまま飛び込んできた。そのまま入室してディートフリートをビーザムの翼で蹴散らし、私の側で飛び降りる。


「無事か?」


心配そうにあちこちを確認して胸に血が滲んでいるのを見ると、紅潮して怒りを滲ませた。


「よくもリティアーナに怪我をさせたな!!」


ユーリウスは腰の剣を振りかざして、一直線にディートフリート目掛けて振り下ろした。


「やめろ!ユーリウス。殺しはしない。エターナルリーベを剥ぐだけだ」


「リティアーナの指一本、髪の毛一本ですら傷つける者は許さない!」


ディートフリートはすんでのところで剣をかわし己の剣を抜いた。

激しい音を立てて切先が何度もぶつかり合う。

カーテンが引き裂かれ、枕の羽毛が部屋中に舞った。

皇子二人の剣戟は火花を散らしながらしばらくの間続いた。


「ユーリウス、お前は騙されているんだぞ。その女は孤児院育ちのただの平民だ」


「それが何だ!」


「平民がエターナルリーベを持つなど過分だ。それを私に寄こせ!」


二人が剣で押し合いながら睨み合った。


「エターナルリーベが欲しければ自分で取れ!取れないならば従え!エターナルリーベを持つ者こそが真の支配者だ!」


ユーリウスが呪文を唱えた。


「バカな、無効化が効いてるはずだぞ」


「お前の魔術など穴だらけなんだよ!」


ユーリウスの放った雷がディートフリートを直撃する。

屋敷の屋根に大きな穴が空き、パラパラと破片が降り注いだ。

ディートフリートは倒れてピクリとも動かなくなった。


「大丈夫か、リティアーナ」


ユーリウスは私に近寄るとマントを外して私を包んだ。

そして癒しの魔法をかけ、傷を塞いでいく。


「ユーリウス様・・私、もうお嫁にいけないです」


「何故だ?間に合わなかったのか?」


項垂れる私を見て、ユーリウスの顔色がサッと変わった。


「気持ちの悪い魔力を流されました。子供ができてしまうかもしれません」


「リティアーナ、魔力を流されたくらいでは子はできぬ。年頃になれば魔力の相性を確かめるために誰でもやることだ」


「そうなのですか?では、どうしたら子供はできるのですか?」


「冒険稼業をしていたならば動物の交尾も見たことがあろう。人間もアレと同じだ」


「えええっ!!!人もアレをやるのですか!?」


「なぜ人と動物とが違うと考えるのかがわからぬ。ハァ、私はなぜ君にこんなことを教えねばならぬのか・・・」


ユーリウスはガックリと肩を落とした。

私は気が緩んだのかホッとして涙が止まらなくなった。

強そうに見られる私だが、男に襲われるのは前世含めても初めての経験である。

怖かったし他人の魔力があんなにも気持ち悪いものだとは知らなかった。

私がボロボロと涙を流すのを見て、ユーリウスはオロオロしだした。


「やはりここを奴の墓場にしておくか」


そんな不穏な言葉を吐いてディートフリートに向かって呪文を唱えだすのをアデルベルト達が止めた。裁判にかける前に殺してしまうのはまずいらしい。

立ったままグズグズと泣き、みっともないと思っていても自分でも止められない。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている私の顔をユーリウスは下から覗き込んできた。


「ひどい顔になっているぞ、リティアーナ。とても見れたものではない」


「・・ほっどいでくだざい・・」


傷ついている人間に向かって、あんまりな言いようだ。

ユーリウスが困った顔で私を眺めている。

私とて恥じらいがある。こんな涙と鼻水で汚れた顔を愛するユーリウスに見せたくはない。

ふいとそっぽを向くと、ユーリウスは突然私の身体を持ち上げ、ギュッと抱きしめた。

優しい腕の中に、囲い込むように閉じ込められる。宥めるように背に回された手が、トントンと私の背を安心させるように叩いてくれた。


まるで前世のユーリウスのように・・・。


涙が一瞬で止まり、私はユーリウスを見つめた。


「ユーリウス様?」


問いかけるように名前を呼ぶと、

ユーリウスは私の瞳を見つめて、何も言わせないよう、人差し指を私の唇にそっと押し当てた。


「少しは落ち着いたか?これに懲りて二度と護衛も付けずに歩き回るのではない」


「ううっ、ごべん・なざい・・もう二度と・・じまぜん・・」


「そうだな。結果的にはディートフリートを捕らえられたし・・まぁ、良しとするか・・」


ユーリウスはそう言って腕を緩め、私をそっと床におろした。


「リティ様!」


クリスタとリシュリアが一階から駆け上がってきた。

二人はユーリウスの腕の中にいる私を見て驚いて立ち止まった。


「なんだか・・はるか昔を彷彿とさせる光景だと思いませんか、リシュリア」


クリスタの言葉にリシュリアは何の反応も示さず、じっとユーリウスの方を見ていた。


「ユーリウス様、屋敷内にペトロネラがいません」


カイルが下の階から騎士達を引き連れて走り寄った。


「ディートフリートに行方を聞いたか?」


「王宮へ行くと言っていたそうです」


その場にいる全員に緊張が走る。


「急ぎ、王宮へ戻る。相手は高位の変化魔法の使い手だ。何に化けているか分からぬ。皆、心せよ!」


「はっ」


ユーリウスが強張った表情で騎士達に命じた。



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