48、第一皇子の謀略(side ディートフリート)
「失敗したと申すか!」
ディートフリートは持っていたグラスを壁に叩きつけた。
破片が飛び散り、絨毯を赤く染める。
「ダランバイン侯爵は捕らえられ極刑に、カルバラ子爵、セントルブルズ子爵、サイトダイン男爵は幽閉、及びそれに従った者達も捕縛され南部は第四皇子により完全に制圧されました
この影響により我が北軍にも離反者が出始めています。いかがいたしましょう」
「おのれ、ユーリウスめ」
ディートフリートは年の離れたあの弟が気に入らなかった。
愛妾の子でありながら離宮を与えられ、本来なら臣下として扱うべきはずが皇子という身分を得た。
いつも涼しい顔を浮かべて無欲なふりをしながらも、王宮内で着実に地位を築き上げ、今や次期王に推されるまでの勢力になっている。
「いつも、いつも目障りな奴だ」
どのような手を使ったのかはわからないが、ビストニアやアクアーリアなどの他領までも味方につけて北軍が中央に進軍するのを防いでいる。
このままでは、ディートフリートが中央に辿り着けるのはいつになるのかわからない状態だ。
「時間が・・時間がないというのに・・」
彼が挙兵したのは、ひとえに先が短い母に王としての姿を見せたかったからだ。
長男であるディートフリートが王位に就くのは当然のことなのに、何もかもが邪魔をしてくる。
「ディートフリート、どうしたのです?」
キイキイと車輪の音を立てて、車椅子に乗った母ペトロネラが部屋に入ってきた。
「母上、ユーリウスの奴が南部を制圧したそうです。次は北部の解体を狙ってくるでしょう」
「憎きあの女の息子、ユーリウスめ。安心なさい。母にはまだ手段が残っています。ディートフリート、中央に戻りますよ。母が王になる最短の道を教えてあげましょう」
「母上・・」
ディートフリートは母親の膝に縋りついた。
「かわいいディートフリート、あなたを苦しめるものは全てこの母が排除してあげます」
そう言ってペトロネラはディートフリートに黒い種を見せた。
「これは?」
「呪いの種と言われるものですよ。これでユーリウスを呪えば、彼奴は魔力を失いエターナルリーベを取ることができなくなるでしょう」
ペトロネラは歪んだ笑みを浮かべながら、種を手のひらの上で転がした。
種からは禍々しいオーラが出て、ペトロネラの腕にまとわりついている。
「支度をなさい、ディートフリート。王の皮を剥ぎ、あなたがエターナルリーベを取得するのです。エターナルリーベを手に入れた者こそが真の勝利者となり、この世界を統べる王となれるのですから」




